ドラゴンクエストIII そして伝説へ…(リメイク)をクリアしました。
このゲームを終えて、感じることは一つ。
それは2024年がドラクエ3の年にならなくて残念だ。ということ。
誤解を招かないように言うと、決してつまらなくなどないし、素晴らしいと思う部分がいくらでもあった。
それでも当時、言葉通りの社会現象を引き起こし、ゲーム史に圧倒的な存在感を燦然と放つドラゴンクエスト3のリメイクが、2024年に発売した様々な他のゲームの中で、正直に言ってそれほど目立つ作品では無かったかのように思える。
原作が世に出たのは1988年。本リメイクまでに実に36年の月日が流れており、ゲームハードは当時とは比較にならないレベルの進化を遂げたし、熱狂的ブームを巻き起こしたゲームソフトが何本も生み出された。
ドラクエ3を原作に忠実にリメイクしたところで、2024年のゲーム業界に大きな反響を呼び込むのは難しいだろう。だからこそ原作を尊重しつつもアッと驚かせる仕掛けを無数に張り巡らせて、改めてドラクエ3というビッグタイトルで再び「社会現象」を引き起こして欲しかった。何か、決して忘れられないような巨大なインパクトを2024年のゲーム史に何かの形で残して欲しかった。
まず思った事はそれである。続いて、一つ一つ本作の要素について感想を。
◇ゲームバランスが気になった。
バイキルトやちからためを駆使して火力を最大限に引き出した戦士や武闘家といった物理攻撃のエキスパート達に、「まもの呼び」を選択するだけで匹敵する火力を出せるまもの使いの存在は戸惑った。発売前の情報から、追加の新職業として鳴り物入りで登場したまもの使い。そうなれば使わない訳にゃあいかんだろう、と編成してみたらドッキリの強さである。火力面以外にも序盤の「やすらぎの歌」「けづくろい」、中盤以降は「やいばくだき」「ひゃくれつなめ」など実に効果的な特技がずらりと並ぶ。
しかしながら全員均等に並んでいる職バランスの良さこそ至高、とするのでないならば、この"ヤッてる"感は面白くはある。ゲームは、強さを振り回している時に妙な快感を覚えるものだ。まもの使いがいささか便利すぎる、と感じるのであれば使わずにパーティを構築する遊び方もある。本作では他の職業に原作からの大幅な調整が加えられ、「特技」を覚えるようになったことで、遊びの幅が広がったのは間違いない。
では他の職バランスはというと、自分は戦士や武闘家といった、単純に「殴る(たたかうコマンド)」職業が他のゲームでも大好きなので、本作でも中盤まで戦士を入れ、ゾーマ戦でも武闘家を入れていた。しかしながら自分のクリア時点でのレベルではそれほど有用だと思える特技が無いと感じた。後半の雑魚敵は一度に大量に出現し、かつ高威力の全体攻撃を放ってくる。そのため、魔法職や勇者が先手を打ってイオナズン、ギガデインなどの全体火力を打たないと処理が全く追いつかない。単体攻撃をしている場合ではないのだ。それでボス戦では強ければいいが、先述の通りバフでお膳立てした彼らの火力が「まもの呼び」と対して変わらない。そこを鑑みると、物理系職業が少し冷遇されているような気がしてならない。後衛職と比べると圧倒的にタフではあったので、ボスの猛攻に耐えうる面は頼もしかったのだが。
◇操作性の不満点。
操作面では、頻繁に使用する特技をキーバインドできないことが大きなストレスに。「しのびあし」を都度かける必要があるのは、現代のゲームデザインからすると少々時代遅れに感じられる。「やせいのかん」や「レミラーマ」なども相当繰り返し使ったので、これらにワンボタンでアクセス出来る仕様が欲しかった。
シーンの切り替えやイベント発生時にダッシュが解除されていることが多く、この細かい部分での不便さが積もり積もってプレイ体験を損なっていた。このゲームで等速で歩いて冒険していたプレイヤーっているんだろうか?個人的には常時ダッシュで良かったと思うし、なんならダッシュでもまだ速さが足りないと感じていた。
◇リメイクならでは追加要素の良さ。
美麗なグラフィックで描き下ろされたモンスター達の動き、断末魔、その挙動はどれもが非常に豊かな表情を見せてくれる。ドラクエといえば冒険の旅に立ちふさがる様々なモンスター達も重要な魅力の一つで、それは派生作品の「ドラゴンクエストモンスターズ」シリーズが大ヒットを飛ばしている事からも明白だろう。
他には、勇者の父「オルテガ」について。彼の旅の足跡が分かるようにエピソードが大幅に盛り込まれており、単なる勇者の父ではなく、一人の人間として魅力的なキャラクターに描かれていると感じる。何よりこのエピソード追加によって、冒険をしながら父の背を追っているのが感じられ、そして追いついた時の一連の展開が非常にドラマチックになった。
また、賛否両論はありそうだが、「ブーメラン」によって原作さながらのエンカウント率と敵の数の多さをパワーで解決した手法は僕は嫌いではない。僕の勇者はガンダムVSシリーズかよってくらいブメを投げました。
各地の落とし物・漂流物の内容からは勇者以外の冒険者の想像をかき立てられるし、道具屋に寄らないでも困らないほどに消費アイテムが豊富に手に入るのは「こんなに貰っちゃっていいの?」と思いつつも、令和向けのイキなサービスと捉えて好評価としたいです。
◇世界を翔ける、王道の冒険。
本作には、過去の大作をリメイクした作品としてはいくつかの残念な部分が確かにある。しかし、それでもこのゲームの核心である、世界を旅する大冒険はその魅力を全く失っていないと思う。広大な世界を自由に歩き回り、実際の外国文化をモチーフとした各地の風景や伝統に触れる旅の過程は、原作から一貫して色褪せていない。そして、ダーマの神殿で転職を繰り返し、キャラクターの能力を強化し、自分だけの理想のパーティーを作り上げるプロセスは、プレイヤーにとって相変わらず楽しい体験のハズだ。プレイヤー一人一人の冒険心を大いに刺激する自由度の高い作りは、このゲームを愛すべき理由として十分であり、リメイク版でもその価値は確かに存在している。
以上が僕の令和ドラクエ3リメイクに対する感想である。
色々言いたいことを言ったが、「アリアハンから始まる旅」をこの時代にまた体験できた事は非常に嬉しく思う。
そしてきっと、今から10年、20年後……『ドラゴンクエストIII そして伝説へ… フル3Dリメイク』がきっと出るのではないか。その時こそは、この年にドラゴンクエスト3あり。と語り継がれる伝説の一本としてゲーム業界を圧倒してくれたら、と願わずにはいられない。
