僕は土曜日になると図書館で日経パソコンを手に取る。
薄い。軽い。1980円とは思えないペラッと感。
毎号100ページほどで、内容も統一感がない。AIの未来を語っていると思えば、数ページ後には「AVERAGE関数の使い方を覚えよう!」と急に初心者講座が始まり、紙面ではド真ん中に=AVERAGE(A1:A10)が堂々と掲載されている。

正直、ターゲットが見えない。
初心者向けにしては専門単語が唐突に飛び出すし、中級者向けにしては浅い。
そして上級者にとってはほぼ全部が既知のものに見えるのではないか。
でも、僕はこれを毎号読んでしまう。
不思議と読んでしまう。
冷静に考えれば、雑誌としてはかなり割高だし、だからこそ僕も図書館で手に取るくらいだ。内容密度だけで言うなら、もっと濃い技術書やWeb記事はいくらでもある。僕自身、マニアほどの知識は無いけれど、趣味としてパソコンに手を出して20年くらいは経っているので、誌面の多くは「さ~~すがにこれは知ってるわね~~」と読み飛ばしてしまう。
それでもめくってしまう。
なぜか。
たぶんだけど、こういう薄い雑誌だからこそ、という部分もある気がする。
パソコンという趣味(あるいはもはや生活そのもの)は、あまりにも広い。パソコンを扱えるという言葉が、もはやなんの指標にもならないくらい、深くて、複雑で、分岐しまくっている領域だ。
Excel・AI・セキュリティ・データベース・配線・ショートカット・自作PC・メール設定・ネットワーク・RPA・VR・動画編集……。
しかもその一つひとつが、深掘りすれば巨大な沼地だ。だからこそ、その入り口すら自分が見落としていることがある。専門性の高い記事には載らない、初歩の初歩の方にこそ意外な盲点が潜んでいる。些細な「へえ」が、この雑誌には詰まっている。
たぶんそれは、すごくちょうどいい浅さなのだ。
専門誌のような深さはない。
でも、浅すぎて役に立たないわけでもない。
突き詰めるというより、視野を少し広げてくれる感じ。
日経パソコンという雑誌は、パソコンの知識を増やす本というより、
自分の知らないほうのパソコンを思い出させてくれる本なんじゃないかと思う。
僕が普段触っている「パソコン」は、ゲームをするマシンであり、このブログを執筆する道具であり、時にはエッチな調べ物をするガジェットだ。でもこの雑誌を読むと、「ああそうか、世の中のパソコンにはまだまだ別の顔があったな」と、忘れていた入り口を見せてくれる。ページをめくるたびに、少しずつ視点を揺らしてくれる。
その揺らぎが、案外楽しい。
だから僕は、1980円の薄い雑誌を、図書館で今日もペラペラめくっている。
知ってることを確認して、知らなかったことにちょっと驚いて、
ほんの少し、パソコンという巨大な世界の端っこを覗きに行くように。
そしてまた、翌月もきっと読んでしまうのだと思う。