へたれゲーム貴族の躁鬱

ゲーム&クソ日記。04年12月開設のブログを18年にこちらに移管しました。名前が長いので「へげ貴族」とでも呼んでください。

番外編:ゲームと連中

中学校生活では小学生時代よりもゲームに傾倒したマニアなプレイヤーと出会う事が出来た僕は、高校生になったならどんな強敵(ゲーマー)との出会いがあるのだろうか?!と胸を躍らせていた。

ゲーム機ではないパソコンという機械でもゲームが出来る事を教えてくれた「U野くん」よりも、ゲームについて未知の情報を持っているヤツがいるのだろうか?物凄い勢いで格ゲーと音ゲーを上達させていった「T橋くん」のような、天才肌のプレイヤーと会えるのだろうか?

クラスの友達はどんなゲームが好きだろうか?僕よりもゲームにどっぷり浸かった子がいるだろうか?

夢をいっぱいに膨らませて進学した僕を待ち受けていた高校生活は、虚無だった。

高校生活は、虚無であった。

クラスメイトは誰もゲームを趣味としておらず、僕はオタク趣味の陰キャラとしてクラスに馴染む事は無かった。教室には虚無の濃硫酸のごとき空気が漂っていて、僕の存在感を限りなく無に希釈していくような、そんなじっとり湿った雰囲気に呑まれ続けた。

ヒエラルキー上位のウキウキスポーツマンが、僕が休み時間に読んでいるアルカディアをからかって取り上げる時に抵抗する一言二言と、留年組がブレイクダンスの練習のために僕のCDプレイヤーを借りる時(毎日借りに来た。クソ)以外に、三年間言葉を発した事はほぼ無かった。

中学生の頃は学校に行けば毎日ゲームの話で盛り上がれたのが楽しくて、自然に無遅刻無欠席の皆勤賞を果たした僕だったので、一切の会話も交流も無く、たまにチャラけた同級生にオタク気質をイジられるクラスに耐えられなかった。一年生のある日、初の無断欠席を敢行してからは毎週水曜日をサボってゲーセンに行く日とし、ついぞ卒業まで水曜日に学校に行くことはなかった。

僕が登校拒否にならず水曜日だけのサボりで済んだのは、またしてもゲームに救われたからである。中学生の頃のように、ゲームの話題から親友になったといった学友はいなかったが、ゲームを通じてのわずかなひと時の交流が、確かに訪れてくれた。これは、あの頃のひと時を僕が忘れないようにするための、単なる備忘録だ。


・「GGXX&GOC Next」TKくん

高校一年の秋頃。クラスではすっかり「気持ち悪いオタク」として隔離が完了した僕は、学校近くの駅前にあるゲームセンターにたまに顔を出していた。

クラスメイトはゲームをやらないので、ゲーセンにも来ない。下校後の心休まる時間だった。そんな時、ウチの制服を着てGUILTY GEAR XXGGXX)」という格闘ゲームに精を出すプレイヤーを見かけた。

このGGXXは前回の記事に登場したGGXというゲームの続編で、マイナーチェンジバージョンが幾つも出ている。高校生になってからの僕はすっかりSTG音ゲーに傾倒しきった頃で、格闘ゲームからは一旦身を置いていたが、気が付けば自然と彼に乱入対戦を挑んでいた。

当時の心境は詳しく思い出せないが、オタク扱いされるならと、せめてゲームの分野でくらい存在感を示したかったのだと思う。そんな反骨心が確かに存在していた。GGXXは暫くプレイしていないが、ウチの学校の生徒に負けるはずなどないとタカをくくっていたのもある。

僕は扱い慣れたミリアというキャラを選択し、彼の操るテスタメントへと挑んだ。テスタメントは戦場に見えない罠を張り巡らせたり、地を這う獣を召喚して背後から急襲したりといったトリッキーな動きを得意としていて、コンボの火力も高く油断はできないキャラだ。しかし僕は相手をナメきっており、試合直後に真っ直ぐミリアを突進させると足払いでテスタメントを転ばせ、光輪(タンデムトップ)を重ねて、二度と起き上がらせまいと猛攻を仕掛けた。

始めのうちは優勢だったが、彼のテスタメントは立ち回りが丁寧で、僕のミリアを的確に迎撃しては罠を張り、手堅い防戦に回った。僕の攻めが崩れると、大鎌で飛び掛かる必殺技のグレイヴディガーを絡めた高火力のコンボで攻勢に転じ、結局全てのラウンドでKO負けを喫してしまった。

僕はゲームの中にすら居場所が無いのか?という強烈なショックに見舞われたものの、なんとか気力を持ち直すと相手をチラ見しに筐体を立つ。そのとき対戦相手も身を乗り出して声をかけてきた。

「F組のオタクやん」

僕はクラスで存在が隔離された上に、迷惑なことにしばしばその存在をよそに宣伝されていた。そのため、顔だけは知っているという同学年が何人かいたらしく、彼ことE組のTKくんもその一人だった。

「俺のテスタの方が強かったな。俺も相当なオタクじゃ」

話かけて貰ったものの、高校生活ですっかり気力が萎えてしまった僕は、彼と良好な関係を築く努力をしなかった。彼自身も、今まで付き合った事がないタイプの職人気質のオタクで、あまりじゃれ合うのを好まなかったというのもあった。廊下ですれ違った時や、ゲーセンで会った時に、二言三言の会話をして別れるといった間柄が続いた。

高校二年生のある日のこと、そのTKくんが急にクラスに入ってくると、僕に向かって一直線に進んできてこう言った。

「なんか…ゲーム貸してくれんか…難しいやつがいい…」

急にこんなお願いをされて面食らったものの、特に断る理由もなかったので快諾した。

僕は手持ちのプレステのソフトの中から「ジェネレーションオブカオス Next(GOCNext)」というゲームを貸す事に決めた。

このゲームは信長の野望やKOEI三国志をファンタジー系にしたといった感じの戦記物シミュレーションで、世界観やキャラクターは魅力的だが、ゲームバランスやUIは出来が良いとは言えず、さらにはとにかく手駒がすぐに出奔して在野に下ってしまうという難点を抱えた、"別の意味で難しい"ゲームである。翌日学校にGOCNextを持っていくと、E組に入りTKくんへソフトを渡して去った。

この頃僕は生物部に所属していたのだが、そこではクラスメイトに邪魔されず一人ささやかな休息の時間を得る事ができたので、部室に通い詰めるようになり、クラスにいる時間はごくわずかとなった。部室とE組の方向関係的に、廊下でTKくんとすれ違う事もほとんどなくなった。ゲーセンも地元の「悟空」に通う事が多くなったのでTKくんとは今までのわずかな交流すらなくなっていった。

そんなTKくんが僕のことを捕まえて、貸していた事すら忘れていたGOC Nextを返却しにきたのは卒業間近の日のこと。

「すまん返すわ。このゲーム武将すぐいなくなりよる。ありえんくらい難しかった。お前これより難しいゲームもっとるか?」
「ええと、伝説のオウガバトルとかはわりと難しかったけど。でも君に貸したこれが一番かな」
「そうか。ならこのゲームが、俺とお前だけが知っとる、世界で一番難しいゲームじゃ」

確か、この翌日か明後日が卒業式で、彼と言葉を交わしたのはこのやり取りが最後だった。

特に二人で遊ぶ事もなく、ゲーセンや学校ですれ違っては軽く言葉を交わすだけ。三年間の高校生活の中でTKくんと十分に心が通ったとはいえないだろう。

これは考え過ぎかもしれないが、TKくんは孤独に見えた僕に気を遣って、最後は言葉を選んでくれたのかもしれない。おかげで、僕らは親しくはなくとも、一つの共通の認識を持った関係にはなれたのだと信じている。

あまりにもささやかな思い出だが、こういう出会いもあったのだから、高校生活は悪い事ばかりではなかったと思っている。あの日筐体に座っていたテスタメント使いに、感謝をしたい。


・「ドラクエ3とコーヒー」MTくん

時期は学祭の準備シーズン。この手のイベントであればウキウキな男子や女子達が思い出作りのためにハリキリそうなものであるが、僕のクラスは一切のやる気がなかった。

当然、あまりある学祭の仕事は僕に押し付けられる事となる。あろうことか、クラス代表の学祭委員(なんと枠は一名だ)にもされてしまった。

クラスで一言も喋らないオタクに、高校生活最後の思い出の学祭の委員会をフツー任せるだろうか?こういう離れワザを平気で繰り出してくるのが僕のクラスだったんだよな。強い。

そんなわけで僕は学祭委員として、放課後に生徒会の役員達と打ち合わせをすることが多くなった。そんな折に役員の一人、MTくんが僕を翌日の昼休みに生徒会室に来るように誘う。

僕は昼休みも教室には居たくなかったので、このような申し出は嬉しかった。次の日、高校生活で一度も入った事のない生徒会室に僕はついに足を踏み入れた。僕を見るなり、MTくんがにやけながら声をかけてくる。

「来たか。これでお前も共犯者だな!」

なんと僕の目に、テレビに繋がれたスーパーファミコンと、ドラゴンクエストIIIのプレイ画面が飛び込んできた。MTくんは近寄ってきて強引に肩を組むと、ゴキゲンな様子で体を揺らし始める。

真面目で理知的で、遊びのない人柄をしていると思ったMTくんだったが、どうやら裏の顔を持っていたらしい。MTくんと一部の生徒会役員は、生徒会室を好き放題できる憩いの場に改造していたという事だった。そしてこの秘密会の参加者が「共犯者」なのだという。

僕はその日から、生徒会室が開放される日(毎日使えるわけではないらしい)にはMTくんとその仲間に呼ばれ、彼らのプレイするドラクエIIIを鑑賞しながらお茶をして過ごした。

学校という場にゲームを持ち込んでプレイするという非日常さに加え、それをやっているのが生徒会役員というギャップに大変驚いた。真面目そうな人達にも色々な面があるんだな、とちょっと考えたりもした。

MTくんは僕が遊びに来る度にコーヒーメーカーを使ってコーヒーを作ってくれた。そしてこのコーヒーが渋くて苦いのなんの。僕は毎回、お世辞は言わず、素直にブベーという渋い顔をしてニヤニヤと笑うMTくんに応えた。

そうして時は過ぎ、秘密会のモニタに映し出されていたドラクエIIIも、魔法使いがイオナズンを放つほどの佳境に差し掛かった頃には、すっかり渋くて苦いコーヒーにも慣れてきた。結局のところ、彼らがクリアする前に、卒業が近づいてこの秘密会はお開きとなってしまったのだが。

MTくんとは卒業式の日に会って話し込んだ。お互いに学校でドラクエをクリア出来なかったことへの悔しさを募らせながら。そして彼は別れ際に僕の肩を叩いてこう言った。

「じゃあな。俺のコーヒーの苦さを語り継いでくれよな」

生徒会役員という立場にありながら、職権を濫用し(?)秘密のゲーム会を築き上げた愉快なMTくんと、その共犯者たち。名作ゆえ様々なハードへ移植が行われ、その都度話題になるドラクエIIIだが、このタイトルを耳にする度に、顔をしかめるほどに苦いコーヒーの味と彼らの事を思い出す。

僕と奇妙な常連

ゲームセンターにはそこを住処とし、いつ行っても居る…というプレイヤーが存在する。彼らは一般的に常連を呼ばれる客層だ。あなたのゲームセンターにも常連はいただろうか。
今回はホームの常連と、彼らを通してゲーセンについて色々学んだお話だ。


東伏見のゲームセンター「悟空」は駅前近くの50円ゲーセンで、僕が毎日のように通っていた馴染みの店だ。

中学生の頃に「GUILTY GEAR X(GGX)」という格闘ゲームが稼働し、悟空にも対戦台が入荷された。後に大ヒットとなるシリーズの、アーケードでの初稼働作品である。下手の横好きで格闘ゲームにも色々手を出していたので、自分もこのゲームをプレイし始める。

対戦台なので、一人がプレイしているところにコインを入れると乱入プレイ…つまりは対人戦になる。人気のゲームだったので、大体すぐに乱入されては席を退かされてしまっていた。ある程度上達するまでは、非常に歯痒い思いを何度もした。

授業が五時限目までの日など、早く帰れる日には真っ直ぐに悟空に向かい、ゲーセン仲間のT橋君や、Y澤君(この二名は以前の記事にも出てきた友達)と共に練習を重ねる日々が続く。特にT橋君は上達が著しく、お互いに攻略情報を共有しあっていた。

攻略情報はカウンターに備え付けられていたアーケードゲーム雑誌(アルカディア)のコラムくらいしか仕入れ先が無く、僕のプレイは立ち回りに難点があった。その代わり、相手の体力を多く減らす連続技、いわゆるコンボについては練習を重ねて、実戦にも導入できるようになってきた。

僕はミリアというキャラをメインで使っていた。相手に一度足払いを決めてさえしまえば、起き上がりに猛烈な攻めを重ねる事ができるキャラである。立ち回りに多少実力差があっても、相手が起き上がりの防御の判断をミスってくれれば一気に勝ちに持っていくことができたので、特にお気に入りであった。

それでも、大人の格ゲーマーや、財力、プレイ時間ともに違う大学生くらいのプレイヤーには勝ち越す事は出来ない。通算の成績を振り返ってみると、1回勝つまでに少なくとも3回は負けていた。

始めた頃は誰と対戦しようが1回すら勝てなかったので、少しずつでも上達していたのは救いだったかもしれない。それゆえに、こんな戦績だろうが、一応自分は「格闘ゲーマー」であるという出所不明の誇りのようなものを持つ事が出来て、飽きずに筐体へ向かう日々が続く。

ある時、乱入してくる相手は決まったプレイヤー達だという事に気がついた。つまりは、ゲームセンター悟空の"常連"である。当時。悟空のGGXの常連は四名ほど存在した。

常連1…いつも柄シャツにジーンズの出で立ちの、ホスト風の人だ。交流ノートを書いている人で、HNも知っている。近所のローソンで見かけた事を書きこんだら、「誰だおめえ?名指しで俺の事書いてんじゃねえよ」と返信が来て、怖くて尿をちびった。確かに知らない相手に近所で見かけたとか言われたら、こう返すのも無理はない。コミュニケーションを取るにも少し考えないといけない、と学ばせてくれた人だ。

常連2…バンダナを巻いている二十代くらいのタバコ好きの兄ちゃんだ。いつ見てもバンダナを巻いている。割と良い勝負になる事が多かったので、たまにこっちからも乱入していた。

常連3…眼鏡をかけた小柄な大学生くらいの人だ。僕より全然強い。GGXではソルという主人公キャラを使っている。

常連4…大柄な体格で、常連3といつも一緒にいる大学生くらいの人だ。この人も僕より全然強い。GGXではポチョムキンという巨体の投げキャラを使っている。

こちらもプレイする以上、貴重な50円がかかっている。プレイタイミングは慎重であった。常連3,4には勝ち目が薄いので、コインを入れる際には彼らがいない時を見計らう。常連1は、そもそも上で書いた事件で完全にビビってしまい、近寄るのすら避けた。

…さて、この頃の僕らはマナーのない悪ガキで、ゲームセンターでは大変失礼な振る舞いをしてしまっていた。

当時の特に横暴な行いの一つに、対戦相手にあだ名をつけて、対戦中に叫んで威嚇するという、悪童極まった幼稚な行為があった。僕らはグループぐるみでその非行に走った。要するに、ゲームの腕で勝てないので、精神攻撃で少しでもミスを誘発しようという、悪あがきの一種である。

この時につけて叫んでいたあだ名は本当にしょうもないものばかりだった。

常連3はダストアタック(空中コンボの始動技のこと)の際に特徴的な表情をするので、「ダスト」もしくは眼鏡をしていたので「メガネ」と名付けた。単純で品性もない。ちなみにこの三年後、僕も視力低下により眼鏡を必要とする。

常連4は体格が良く色黒だったので「黒ゴマ」と呼んでいた。今思うと意味がわからない。

たまに常連3,4と一緒に来る細身で顔が良い男性には、特に貶すところがなかったので「ティータイム」というあだ名をつけていた。なんか貴族っぽくて優雅に紅茶を飲んでそうないけすかないヤツだったからだ。

特にポチョムキン使いで、本人の体格も良い常連4相手に僕らは「おい黒ゴマ!!ポチョムキンポチョムキン使ってんじゃねえぞ!」と筐体の向こうから積極的に喚き立て、少しでも相手を萎縮させようと躍起になっていた。

彼らからすれば、ちょっと店員に言うなりすれば僕らを即出禁に出来ただろうし、なんなら自ら少し脅しをかければ、年の離れたこちらなど一発で黙らせる事が出来ただろう。しかし、彼らはただ黙々とまるで職人のように、ゲームの腕だけをもって、こちらを実力で圧倒する事だけに集中してくれていた。

人間の肉体にチンパンジーの脳を搭載していたそんな僕らの振る舞いは一ヶ月ほど続いたが、すぐに変化が訪れる時が来た。常連というほど遊びに来てはいなかったが、僕らが同じようにあだ名をつけてヤジを飛ばしたプレイヤーが他に一人いた。一つ年上で違う学校に通っている、進学塾帰りに良く遊びにくるプレイヤー、Oさんだ。名前は友達の友達という遠いツテで知った。彼はこのゲームセンターで一番GGXが上手だった。

Oさんに乱入されて蹴散らされた僕らは、彼にも「がり勉メガネ」というあだ名をつける。当時中学生だとしても不安な語彙力だ。僕らは彼にやられてはそのつど「がり勉眼鏡野郎~~!」とゲーセンに響くような声で騒ぎ立てた。繰り返すが僕も三年後に眼鏡ユーザーになる。彼も筐体越しに叫ばれて、とても不快な思いをしたに違いなかった。そんな彼と、交流を持つ機会が訪れる。

いつの間にか、T橋君が彼と接触し、GGXについて教わっていたのだ。T橋君は既に仲間内ではGGXについて最も詳しく、司令塔的な役割となっていたから、彼が築いた繋がりを無視する事は今後GGXについて貴重な情報を得る機会を失う事を意味していた。僕はOさんがプレイを終わるのを待ってから声をかけ、T橋君の友人である事を告げると、今までさんざん騒ぎ立てた事を謝罪した。この時Oさんが言った事を完全には思い出せないが、「いいよ、俺も見るなり乱入して一方的にやっつけちゃったからね」というような感じで僕らを許してくれて、それからGGXについて色々教えてくれた。Oさんが高校生になって悟空に来れなくなるまで、僕らとの交流は続いた。

このOさんの件で、僕は今までヤジを飛ばしてきた相手が、話しかければ返事も来て当然、意志をもった普通の人間だという当たり前の事を学んだ。僕らのグループはそれから、常連3,4に対して悪態をつく事をぱったりと中止した。

常連3,4と顔を合わせ対戦する機会はGGXの新作「GGXX」が出ても暫く続き、やがて僕の興味がGGXX以外のゲームに移り始めたあたりで一旦落ち着き、そして悟空が閉店した事により終わりを迎える。

僕が大変失礼な振る舞いをしていた事実は消えないし、彼らにも嫌な思いをさせてしまっただろう。彼らと、そしてOさんが大人の対応をしてくれたお陰で、マナーについて考える機会をもてて、何よりそれからも悟空という場所に居続ける事ができたのには、本当に感謝しかない。

なぜ今回、こんな話を書いたのかというと、この時の常連3,4を少し前に電車の中で偶然見かけたからだ。彼らがゲーセンで知り合ったのか、元々学友だったのか、そこまでは知る由もないが、悟空にいた頃から10年は経つのに、変わらず二人で仲良く談笑しているのを見て、なんだか嬉しくなってしまった。

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彼らはGGXにまつわる一部の常連で、他にも悟空にはたくさんの常連がいた。

連邦vsジオンで仲良くなったお兄さんと、そしてそのご友人の方々。いつもパワーストーン2をやりにくるおじさんに、怒首領蜂にひたすら挑み続ける作業着の兄ちゃんや、バーチャロンだけやりに通っていたおじさん達…実際に話しかけた事のある人は少ないけれど、あの日あの場所で、ゲームセンターの風景の中に、その常連たちは存在していて、確かに同じ空間で同じゲームを楽しんでいたのだ。

他の常連からすれば、僕と友人は「いつも騒いでるうるさいガキの常連」という風景の一部だっただろう。恥ずかしい限りだ。それにしても常連3,4に奇跡的にこのブログが届いたりしないだろうか。直接謝りたいなと思う。


以上が僕と、常連のお話。

最近FGOACを始めて、三国志大戦へも復帰したので、時間を見つけてはまた、どこかの誰かの風景の一部にでもなりいこうと思う。

メギド72、それは今、最もクチコミでアツいソシャゲ

あなたはもうメギド72を始めているでしょうか。

始めている人はすばらしい。
始めていない人は、これからメギド72を楽しめるということなので、すばらしい。


メギド72というソシャゲがあります。


このゲーム、とにかく宣伝・広告が頼りなく存在を認知されづらかったのですが、段々と世のゲーム好き達に捕捉されはじめ、この頃口コミによりユーザー数を増やしつつあります。6月には10,000人だった公式のフォロワーも、現在では1.5倍になっています。苦笑するしかない謎タイトル絵や悪魔の名前を列挙し続ける不思議なテーマ曲など、初見の入門を拒むトラップが幾重にも張り巡らされていた、一見して怪作と間違われかねない本作が持つ魅力は一体どこなのでしょう。自分なりに言葉で伝えていきたいと思います。

初見の感想は「Tap to start って。泣き止むまで待った方がいい?」


とりあえず、超簡単にこんな感じ。
それぞれ詳しく紹介していきます。

■メギド72の魅力
【バトル】行動を取り合う!一風変わったバトルシステム
【キャラ・物語】キャラクター像を確立させ、描き切る。ライターの圧倒的な力量
【設計】時間を奪われづらい優しい設計

■賛否両論ありそうな点
・全員生存クリアの難易度
・フレンド機能などのソーシャル要素は無し

 

『メギド72の魅力』

 

フォトン(行動)を取り合うバトルシステム

メギド72をメギド72たらしめている本作独自のバトルシステムがドラフトフォトンシステムです。ドラフトは野球でいうとこのドラフトと同じです。

これはターン開始時にランダムで出現する3種類のフォトンという行動権を、敵と味方で順番に一つずつ取り合うもの。選んだフォトンを任意の味方一人に与えて行動させるのですが、フォトンの種類によって発生する行動が変わってきます。フォトンの種類は簡単に説明すると「キャラ固有スキル発動」「通常攻撃(ゲージ次第で奥義発動)」「奥義チャージ」となっています。

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このシステムにより、同じ編成で同じ敵と戦ったとしても、毎回違う駆け引きが発生するのが面白いところ。「スキルが強い相手だから使われないようにスキルフォトンをこっちが奪う」「一度だけ無敵になるバリアを張ったので、あえて相手に奥義を打たせて無駄にする」といった、場に出現したフォトンの種類を見て、相手の行動とこちらの行動を天秤にかけながら戦術を組み立てていく奥深さがあります。

フォトンの出現数は1ターンに10個で、敵も味方も最大行動回数は5回(スキル等で回数前後あり)。味方キャラクターは複数回行動する事で真価を発揮する者や、数ターンに1度大技をぶっぱなす動きが強力な者など、各々が独自性を持ち、このバトルシステムの中で個性を自在に発揮します。一般的なRPGでは回復役や盾役は、味方が元気なタイミングは手持ち無沙汰になりやすいですが、このゲームでは動く必要がない時は行動を攻撃役に回すという役割を持つ事ができるので、無駄な行動を選択しなければならないストレスが殆どありません。

バトルの仕組みをうまく理解して、こちらの狙いがきっちり通って勝利できた時の心地よさは胸をすくものがあります。自身のプレイングに対して達成感という報酬が与えられるのも夢中になれるポイントの一つです。

ここまでの紹介で、複雑難解なゲームに感じられるかと思います。実際のところ全員生存でクリアを目指すのはステージにもよりますが高難易度では中々難しく、頭を使わせられます。しかし、普通にクリアしてストーリーを進めるだけならレベルアップしてのゴリ押しでもなんとかなったり、場の出現フォトン次第で敵も強い動きが毎回できるわけではないので、すんなり攻略できたりもします。ぶっちゃけ、回復しながら単純な攻撃行動を押しつけまくってるだけでも、意外と進めます。実際にやってみると文章を読むのとは理解も違うと思うので、ぜひ体験してみてほしいです。

《まとめ》
・バトルでは誰を何回動かすか決められるよ
・場に配られた手札を見て考えて戦っていくよ
・こちらの狙いが通って勝つと、超気持ちがいいよ


力量あるライターにより描かれた緻密なキャラクター像と物語

このゲームの特徴的なバトルについては結構な方々が紹介しているので、僕は魅力的なキャラクター達と物語に紹介の比重を置こうと思います。

いきなりベタ褒めしますが、キャラクターの作り方が半端じゃなく圧倒的に巧みで、さらにそれらを物語に絡ませて展開させるのがとても上手です。

ライターの力量が抜群だと感じました。ここでいう力量とは、上手な文章を書いたり、卓越した文章表現をするといった意味ではなく、キャラクターが持つ内面・精神性を把握しきり、一人の人間だと考えた上で、巧みにストーリーに絡ませる力のことです。

例えば、面倒事が嫌いで頑固なキャラがいたとして、どうしても物語の都合上そのキャラに面倒事をさせる必要があった場合、どのように納得させるのか?といったシーンの描き方が上手です。キャラクターが持つ、一つの性格の側面をキャラ付けのパーツとして単純に消費して終わりにはせず、そのような性格を持った一人の人間として、問題に対峙したとき、どう考え、どう動くのか、といった部分がしっかり考察されているように感じられます。

また、分かり易い単純な個性付けがされたキャラにも、その個性一辺倒の力押しのキャラ造形だけがされているわけではなく、ストーリーの中で様々な魅力が見えてきます。

好例はメインキャラの一人であるモラクス。
難しい事を考えるのが苦手で、バトルとお肉が大好き。つまりは単純な脳筋です。冒険の道中でも、方針の相談に頭を使って絡む場面は少なく、哨戒任務や賑やかしの役割を担当する事になります。

この手の脳筋キャラが「敵がどれだけいても全部倒せばOKじゃん!」という根性論を振りかざして突っ込んでいくシーンはもはやお約束ですね。

ところが、彼は脳筋のバトル好きなのでバトルに関してはニューロンが太いのです。
これは、ある戦争の行方を想像した話を聞いた彼が、咄嗟に突っ込むシーンですが…

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このように彼は「勝算が3割しかない戦いに挑むべきではない」という意見を言う事ができるんです。

このキャラクターは、難しい事は考えられずとも、戦いに関しては駆け引きを識っているんです。これ、結構凄くないですか?脳筋バトルバカなので、バトルに関しては頭が良いんです。このように、キャラクターの性格・性質が多面的に捉えられた描写がさりげなく、幾つも見逃しちゃうくらい、自然に盛り込まれています。

多面性の描写は、それなりの力量がなければ矛盾したキャラクター像を創り出してしまいます。しかしこのゲームのキャラクター達の描写には違和感は見受けられません。

また、一見キャラ性にそぐわない描写があっても、そのキャラの個別ストーリーFGOでいう幕間、グラブルでいうフェイトエピ)に回答が用意されており「な、なるほどな~!?こういう事だったのか~!」と納得することも。

ラクスが戦闘方面の考え方については理解を示す描写も、個別ストーリーを読むと実は地頭は良く、考えるのが苦手だけという事が分かるので納得します。まさしく建前上の言葉ではない"個性豊かな"キャラクター達が物語を織りなします。

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ここまで描き切っているのもそのはず。この開発者コメントリレーの一節をご覧ください。ここまで徹底した上で人物を描いているのと知って、驚きました。ソーシャルゲームの少ない文章量の中で、確固たるキャラクタ性を発揮させられる、書き手の力量に脱帽です。

ところで、このゲームの主要キャラクター達はゲームやアニメなどの創作に登場にする事が多いソロモン72柱の魔人」「伝承の悪魔・天使」などがモチーフとなっています。原典の設定が反映されているキャラも多く、お気に入りのキャラクターが絶対に見つかると思いますよ。

当方イチオシのナベリウス。実在のオカルト書籍ではケルベロスと同一視される事があってか
忠犬性格のわん娘となっています。かわいすぎる。




物語までストレスフリー。知恵と勇気の冒険活劇

主要キャラクター達によるメインシナリオも素晴らしく、読みごたえがあります。

悪魔の力を呼び覚ます事が出来る主人公が、世界の危機に立ち向かう!という世界救済的な王道系ストーリーなのですが、キャラクター達の掛け合いがとても素晴らしいです。

ストーリー上の大小様々な出来事に対してどうするか、いつも主人公達は民主的な合議制で決定します。様々な個性や方針を持ったキャラクター達が、お互いが納得いく様に話し合い、行動を決め、一度決まれば全員がそれに向かって尽力する。というのがいつもの展開なのですが、この話の流れを毎回上手くまとめているので、読んでいて気持ちが良いんです。

創作では強烈な個性を持つキャラが、その個性のため話の展開を邪魔してしまうことがあります。もちろんそういった面も計算した上で、お話とキャラを立たせている作品もありますが、目に余れば苛立ちを感じるかもしれませんし、行き過ぎればキャラの魅力を損ないます。一方メギド72では、個性が強いキャラが何かしらの主張をしても、周囲を置いてけぼりにしないし、させないように話が進んでいきます。おかげで先を読みたい気持ちも湧き、読後感も良い。まさに"ストレスフリー"。UIやシステムだけでなく、シナリオにまでストレスフリー感を出されたらこれはもう気持ちよ~くシナリオにのめりこむしかありません。

2018年バカキャラ・ゲーム部門で一位を取れるシャックス。
主人公たち一行の中では、彼女だけが別格の知性を有しています。


メインキャラクター達にも次のような性格・行動指針が設定されています。

世界の危機を救う事を優先するブネ。
合理的でクールに議論を進めるウェパル。
激情と冷静さを備え一癖も二癖もあるガープ。
道徳と倫理を重んじて弱者に味方するマルコシアス
吟遊詩人らしく心情の機微に鋭敏で感情論の落とし所が上手いバルバトス。
陽気で人懐こくコミュニケーションの端を開くモラクス。
バカのシャックス。

こんな個性派メンツが知恵を出し合い、機転と判断力に優れた勇気ある主人公を導きつつ、導かれつつ、一丸となって世界の危機に立ち向かうのがメギド72のシナリオです。

ぜひ触れてみてほしいです。

《まとめ》
・一人一人キャラクター像が丁寧に描かれている
・蔑ろにされるキャラがいない、読後感の良いストーリー展開


ゲーム設計

プレイに関する設計は、時間に追われるプレイヤーにとってありがたいスキップ用の攻略チケットが採用されています。

全員生存でクリアしたステージは、チケットとスタミナを消費する事で、クリア扱いとなりアイテムをすぐに手に入れる事が出来ます。

プレイする時間があるときは、チケットを使う為に、頭を使って全員生存を目指し、時間が取れない時はチケットでサクっと周回。このようにメリハリあるプレイが可能です。

イベントの開催もありますが、がっつりと時間を取らなければ他のプレイヤーについていけない!というものではないのも安心。後述しますが、対戦以外にソーシャル要素がないので他のプレイヤーとの競争は実質ない状態です(対戦も現状、出来るだけで報酬などはなし)

《まとめ》
・時間が無い人のためのプレイスタイルも用意されているぞ



『賛否両論ありそうな点』


全員生存クリアの難易度

クリアするだけなら、スカイツリーぐらいは折れるパワーを持ったゴリラキャラクターが序盤にすぐ加入するので、彼女を攻撃面の軸にしつつレベルを上げながらゴリゴリやっていけばなんとかなります。

清楚な顔してますがリアルなストリートのゴリラです


ですがやはり、ステージの適正レベルで全員生存クリアをキメるには、それなりにゲームへの理解が必要です。全員生存クリアがそのステージでチケットを使えるようになる条件なので、キャラのレベルを解放する為の素材が手に入るステージを全員生存クリアできない→レベルを上げたいのに素材が手に入りづらい、という状況が出てくるかもしれません。

チケットが使えるようになるというご褒美のため、考えてしっかり攻略するのがこのゲームの肝の一つでもあるので、この仕様が変わると途端に味気なくなるとは思いますが、あれこれ模索して攻略するのがちょっと苦手な人はもどかしいかもしれません。

どうしても厳しければ、手持ちキャラやレベルなどを伝えて、ネットの皆さんと情報交換するのが良いかもですね。


フレンド機能などのソーシャル要素は無し

メギド72は完全な一人用RPGとして設計されており、フレンドから仲間を借りたり、ギルドに所属して協力したりといった要素がありません。他プレイヤーとの唯一の交流の場は対戦コンテンツのみ。僕らは拳と拳で語り合うことしかできない。対戦コンテンツで上位にならないと貰えないアイテムとかはないので争いを好まない人も安心。最初やるとちょっと石が貰えるだけで、普段は特に何も貰えないので、完全にバトル魂をぶつけるだけの場となっています。

他のゲームみたいにソーシャルの交流に疲れちゃったなという人や、他人と競争するために周回するのはもうつらいな、という人には評価点ですね。ただ、このゲームのシステムでなにかソーシャル要素が欲しかったなとか、せめてフレンド機能で他の人がプレイしてる様子くらいは覗きたかったな、と考える人にはちょっと惜しいかもしれませんね。

《まとめ》
・ステージを全員生存してクリアするとメリットがあるが、達成は難しめ
・フレンド機能やギルドなど、そういう交流や競争要素は一切ない



リセマラも実質不要なのでインストールしよう

というわけで、推しています、メギド72。
バトル楽しいよ。
お話も面白いよ。
かわいい娘もイケメンも揃ってるよ。
3Dモデルもキャラによって筋肉を描き分けるほどのコダワリっぷりで凄いよ。
しかもみんな元が悪魔だからめっちゃ怪物に変身したりもするよ。
凄くない?
あと書き忘れたけど曲もつい口ずさみたくなる旋律で聞き飽きないよ、しかも曲DL無料

あと有志の攻略wikiとかも超親切ですごいから困ったら読めば勝算モリモリ出てくる。

ウォーッ!ここまで読んでくれてありがとう!

つまり、あなたもメギド72をやるしかない!
新たなソロモン王を、お待ちしております!

ゲームと友達(?)「ダンジョンズ&ドラゴンズ シャドーオーバーミスタラ編」

ちょくちょく書いてる学生時代のゲームにまつわる友達の思い出話、今回は特定の人間に絞らず、あるタイトルをプレイしていて関わった人々の話をしてみる。

今回のタイトルはアーケードゲームダンジョンズ&ドラゴンズ シャドーオーバーミスタラ』。


小学生の頃、親が買ってきたゲーメストという雑誌を読んで、ゲームセンターに興味を持ち始めた僕は、風紀の乱れた場所へ通う事について何度も窘められ、説教を受けたが、家で遊べるものとはまた違ったゲームが遊べるその世界に、ずっと魅了され通うのを止める事は無かった。

中学生になってからも、学校の帰りに、友達との待ち合わせ場所に、ゲームセンターへ入り浸る日々が続いた。

当時のお小遣いは月に1,500円。
遊び続けられるほどお金を持っていなかったのが、たまに外食してくるようにと食費を渡される時があったので、それをそのままゲームセンターにつぎ込んだ。

金銭面の問題のため、長く遊び続けられるゲームこそが、ただ一つの正義となった。
僕は特にシューティングゲーム(STG)に夢中になった。
1コインクリアが出来るようになると、この頃のSTGは大体20~30分ほどの時間を潰せたからだ。

ストライカーズ19XXシリーズ、ESPRADE、怒首領蜂プロギアの嵐…これらのタイトルは上手な人のプレイを観察しつつ、自分でも敵のパターンを暗記して、上達していった。この頃入荷したSTGの殆どを50円玉一枚で1周目クリアが出来るようになった。

しかし毎度毎度STGでは飽きがくる。
その時、ゲーセン入り口に置いてあった今まで気にしていなかったゲームを、1コインで延々と1時間近く遊び続けているプレイヤーがいる事に気が付いた。

このゲームだ!このゲームで時間を潰せるようになりたい!と僕は強く思った。

それはダンジョンズ&ドラゴンズ シャドーオーバーミスタラ(以下D&D)というベルトスクロールアクションゲームで、簡単にいえば「ファイナルファイト」のようにキャラクターを動かし、敵を倒しながら、左右にスクロールするステージを進んでいくゲームだった。

タイトルから連想できるように、ファンタジー世界を舞台にしていて、プレイヤーは戦士や魔法使いといったキャラクター六人から一人を選択して遊ぶ。

行きつけの東伏見のゲーセンには、入り口に何故かずっとこのゲームが置いてあり、存在自体には気が付いていたのだが、ゲームセンターという特別な体験ができる場所で、家で遊ぶようなファンタジーRPGテイストの、ちょっとバタくさいイメージのゲームをやる気にはなれなかったのでスルーしていたのだ。

さっそく見よう見まねでプレイに挑むが、全10ステージ以上あるゲームにも関わらず、最初の1面すら越す事が出来ない。
それぞれのステージの最後には、強力なボスが待ち構えていて、これを撃破しなければならないが、このボスがどのステージでもかなりの曲者だった。

操作キャラクターは、戦士や僧侶、盗賊など、それぞれ個性的な技能を持っており、キャラクターによってゲームの攻略法が異なるのも、攻略する上での混乱を招いた。

僕はまず、操作キャラクターを六人の中から決めなければならなかった。
全員一度はプレイしてみて、その上で熟考する。

マジックユーザー…魔法使いだ。通常攻撃があまりに貧弱で、数で押される雑魚戦があまりにも大変だ。魔法にも使用回数に限りがあるので、効果的に使える場所を覚えないといけない。上級者用に見える、却下だ。

シーフ…盗賊だ。宝箱を開け放題なのはいいが、必殺技の操作が独特な上、耐久力も非常に脆い。耐久力の低さがとにかく不安で、操作もクセが強い。却下。

ドワーフ亜人族の戦士だ。やや癖のある操作感だが、体力は抜群に多い。初心者にも優しそうだ。

エルフ…魔法剣士だ。接近戦も魔法もこなす万能キャラに見えるが、シーフと同じで耐久力がとにかく低く、剣のリーチも短く危険と隣り合わせだ。使いこなせそうにない。

クレリック…僧侶だ。武器が短いメイスなので至近距離での接近戦を強いられるキャラだが、回復魔法を使う事が出来る。ダメージを回復する手段が限られているこのゲームにおいて、回復魔法の存在には惹かれる。操作候補に挙がった。

ファイター…戦士だ。クセのない操作感で、高い耐久力をも持ち合わせており、初心者向けに見える。このキャラも良さそうだ。

……以上のプレイ感から、ドワーフクレリック、ファイターの三人に絞ってプレイをする事にした。

しかし、どのキャラも結局、ボスとのガチンコ勝負になると、トリッキーなボスの動きにみるみる耐久力を削られていき、すぐにゲームオーバーになってしまった。
本当に難しい…最後まで行くのは無理なのでは?と思い、少しD&Dから距離を置き始めた頃だ。
一人のプレイヤーがD&Dの筐体に座っていた。一時間、二時間とずっと一人で座っている。最初はどこかでやられてコンティニューをしたのだと、思っていたが、どうも違うらしい。
このプレイヤーは50円玉一つで、1クレジットで二時間以上遊び続けているらしかった。

画面に映るキャラクターは、剣も魔法も中途半端で、耐久力に難があり、ボスの攻撃が掠れば即座に致命傷になる、弱いキャラだと思っていたエルフだ。

そのプレイヤーは僕が見たこともない連撃を繰り出しては、たちどころに敵を処理し、厄介な雑魚の群れは魔法で一掃。ボスの攻撃には的確に連撃と魔法を合わせ、危うげなくゲームを進めていった。しばしば見たこともない隠し部屋に入っては、宝箱を回収しながらゆっくりとコーヒーに口をつける。とても、とても贅沢な1クレジットに見えた。

それにしても、器用貧乏な魔法剣士かと思っていたエルフが、剣も魔法も両方極めた達人に見え、驚きを隠せなかった。確かに耐久力は低いが、魔法を緊急回避の目的で使用すれば被弾することもない。

この超絶プレイを見た僕は、いつも書き込みをしている休憩コーナーの交流ノートに「D&Dで上手いエルフ使いを見た。ああなりたい」と書いた。

すると、その方から書き込みに返信があった。「よければ一緒にやりませんか」と。
こうして僕は人生で初めて、友達ではない見ず知らずの人とゲームセンターで交流を持つことになった。

この人はシェードさんと名乗り、D&Dのスコアランカーだと語った。
20以上は歳が離れていると思われる、三十代後半くらいの人だった。

僕はシェードさんから、隠し部屋の場所、ボスをハメ殺すテクニック、基本的な攻略操作などいろんな事を教わった。
しかし、あんまり東伏見には来ない人で、レクチャーも数回、数時間授けてくれたところで、いつしかぱったりこなくなってしまった。

けれどシェードさんから、たくさんのテクニックを教わった僕は、みるみる先に進めるようになり、難関のステージ3を突破するやいなや、そのプレイでなんと一気にステージ8まで一足飛びで攻略を進めた。
いつも10分でやられてしまっていたゲームを、30分は遊ぶことができた。達成感が体にみなぎって、その場で踊り出したくなるくらいの充実感が体を駆け巡ったのを覚えている。

「敵をダウンさせたら頭側に回って追撃するんだ。そうすると反撃を受けない」
「このボスは危ない攻撃が多いから、緊急回避のアイスストームは出し惜しみしちゃだめだ」
「こいつは強敵だけど、この氷の剣さえあれば簡単に倒せるんだ」

シェードさんが教えてくれたことを思い出しながらプレイを重ねる。僕は彼を倣って、エルフを使用キャラにしていた。

一度斬りつけた敵を死ぬまで逃さない連撃も覚えた。
攻撃魔法を出し惜しみしないタイミングも覚えた。

中学三年生になったある日、僕のエルフはついに最後のボスである、巨大ドラゴン・シンの喉元に刃を突きつける。
シェードさんの真似をして、大して美味しいとも感じなかったコーヒーを買って缶を置きながら、一時間以上、贅沢な時間を50円で過ごせるようになったのだ。

それから月日は過ぎて、東伏見のゲームセンターも潰れ、いつの間にか僕は大人になった。財布の事情も娯楽の事情も、中学生の頃とは変わったから、1クレジットで長く遊べるゲームをもう求めてはいないのだけれど、僕は今でも毎月必ず、このゲームを秋葉原のゲームセンターまで遊びに行く。

使用キャラはエルフ。筐体の上には缶コーヒー。初期装備の選択もシェードさんと同じサークレット。
今もずっと、あの頃からシェードさんスタイルだ。



このゲームで経験した出会いはシェードさんだけではない。
もう一つの奇妙な思い出を語ろう。

それはシェードさんの教えにより、ある程度攻略も慣れてきた頃の事だった。いつものように一人でD&Dに興じていると、いつの間にか隣の3P・4P側筐体からクレジット投入音がするではないか。

「…??」

横を見ると、なんと知らん学校のヤンキーどもが勝手にコインを入れていた。
すぐ隣の2P側にも、グループと思わしき男子生徒が腰を掛けて座り、こう言い放った。

「やろうぜタク!」

タクというのは、いつも使っているキャラクターネーム(このゲームは序盤に名前入力画面がある)だ。それにしても、誰だか全く知らず、心当たりがない。それもそのはずで、彼らは全くの他人だった。
恐らくは同世代くらい、または高校一年生くらいだろうか、全員が着崩した制服に染めた髪をしていて、明らかにこのあたりの学生では無かった。

急に絡まれて、だいぶ及び腰になったが、悪意は無さそうなので一緒に遊ぶことにした。このゲームは4人まで同時プレイが可能なのだが、プレイ人数に比例して難易度が上がる仕組みになっている。
そのせいで1人プレイ時に比べ格段にパワーアップしたボス達に、何度も粉々にされたが、全員で爆笑しながらもコインを連続投入し、力技で4人でクリアをした。

結局彼らがどこの学生だったのか分からず、そもそも一人として名前すら不明のままだ。彼らは常連ではなかったので、あまり顔を合わせる機会もなかったし、その後も一緒に遊んだことはなく、この時を含めて確か3~4回しか会わなかった。

最後に見かけてから、3年か5年か、詳しくは覚えてないが、かなりの時間が経った、ある日の夜。
潰れた東伏見のゲーセンの、隣の駅に用事があり近くの踏切で、信号待ちをしていた。すると踏切の向こうに、僕に向かって、何やら声を荒げて両腕を振り回しているバイク乗りの連中を見かける。
なんだ?頭のイカれたDQNが威嚇してきてる…目を合わせんようにしよう…と目線を逸らす。しかし、やがて彼らがある言葉を叫んでいる事に気が付いた。

「ワレニカゴー!!」

ハッとした。良く見ると、連中はあの時D&Dを遊んだヤンキー達だ。
信じられない。
連中は一回遊んだだけの、パッとしないこの小坊主を覚えていてくれたのだ!

僕も気が付くと、夢中で手を振って、力いっぱい何度も叫んで応えた。

踏切が開ける頃には、連中はこちらに向かってひとしきり叫び終え、バイクで反対方向の坂の上に走り去っていった。

たまたま用事があって東伏見方面へ向かった日なので、本当に偶然の再会だった。それ以来そこへ行く用事も殆どなく、行っていないから、あれからは一度も、あのろくでもないヘンな一日だけの戦友達の姿を見かけてはいない。

ゲームと友達「ファイナルファンタジータクティクス・U野君編」

昔プレイしたゲームについて、当時の友達のことを絡めた思い出のシリーズ、今回はFFTことファイナルファンタジータクティクス編。


タクマ少年はスポーツも勉強も出来ず、学生時代は小中高と、教室の隅とのシナジーを一貫して形成していたが、それゆえに周囲には似たような不器用な連中が集まって不気味な渦を形成し、それなりに心地よい溺れ方をすることが出来た。

ゲーマー奇面組ともいえる僕の友達の一人、U野君とFFTの思いでについて記憶の限り記していこうと思う。


ファイナルファンタジータクティクス

スクウェアが放つ国民的RPG・FFがジャンルをシミュレーションRPGに変えて新登場──当時小学6年生のタクマ少年にとって、これは大事件であった。

ゲームに詳しくなくてもFFならVやVIはプレイしたことがあるクラスメイトもおり、そんな"一般ピープル"と数少ない話題のネタとして共有できる事で大好きなFFシリーズが、クラスで自分以外プレイしているのを聞いたことがない、シミュレーションRPG(SRPG)という土俵に上がってきたのだ。

例えるならアイドルが自分しか知らないマイナーな作品を、テレビで褒めちぎっているような、そんな感慨深い気持ちである。
SRPGといえばクラスの誰も知らない「タクティクスオウガ」や、「魔神転生」を独りでプレイしていたのみ。FFTには大きな期待を持っていた。

が、いざ発売してみるとクラスメイトの何人かがFFTを購入したのだが、クリアまで漕ぎ着けたのはわずかであり、SRPGというジャンル自体には誰も見向きもしてくれなかった事を覚えている。

そして時は過ぎ僕は小学校を卒業し、中学校へ入学。
彼に出会ったのは入学式から一週間ほどたったある日。

まだこれといった友人もできない僕が、昼休みを持て余しているとストーブの前で腰を落とし踏ん張りながら「チャージ20!」と叫んでいる、パッと見てバカだと分かる親切なヤツを見かける。

彼は後にFFTで絶対手に入れられない装備を、敵から盗んだと大ウソを吹き込んで僕の8時間を奪ったU野君だった。彼への怒りは今でも定期的にツイッターで発散している。

彼の姿を見た僕は脳内で「(チャージ20ってまさかFFTのチャージ…?あのポーズはそっくり…でもあんな敵に当たらないゴミ技をいちいち真似するとは考えにくい…)」と考えを巡らせ、悩みながらもU野君へ近づいて勇気を振り絞り一言「チャージ20、弱くない?」という旨の言葉を投げた。
その直後のやり取りまでは覚えていないが、この"ストーブ前突然チャージ20事件"で、僕はU野君という中学生活では初めてのゲーマー仲間を得る事が出来た。

U野君はにんにくを食ったあと人に息を吐きかけてきたり、誰彼かまわずロッカーに押し込めては自分も入り、全身をベタベタ触る"奥義ホモロッカー"の使い手でもあり、こういった最低の趣味を持っているのが大きな難点だが、学生時代に出来た友人の中では数少ないゲーマー肌の人間であった。
メジャー・マイナー問わず様々なゲームをプレイし、やり込み(学生時代の僕らのいうやり込みとはプレイ時間がべらぼうに長かったり、全員Lv99にしたりといったもの)にも手を付ける、ゲーム趣味人の彼とはすぐに仲良くなった。

彼の家に招待され、初めてパソコンでのみ遊べるゲームがある事も知った。その時見せてもらったHALF-LIFEというゲームは、今までに見たこともない過激な描写が盛りだくさんで、ゲーム機以外で遊べるゲームが存在する事に驚いたのを覚えている(余談だが大人になってからこのHALF-LIFEのアーケード版に生涯稀に見るほどズブ嵌りする)

彼とは他にも色々なゲームの話をして遊んだが、特に思い入れが深いのは冒頭で語ったウソ吹き込み事件だ。

当時中学生で金欠の僕らは常に新しいゲームを手に入れる事が出来たわけではなく、クリア済みの名作を何度もやり直す習慣があった。
中学三年になっても時折FFTを最初から始めては、クリアまでやり続けるといった事を繰り返していた。
これはU野君も同様で、中学卒業を半年ほど後に控えた夏の終わりの頃、飽きもせず何度目かのFFT談義をしていると、彼が唐突に「エルムドア戦で源氏シリーズを盗んだ」と語ったのだ。

このゲームに登場するエルムドアという敵は、そこでしかお目にかかれない源氏シリーズという装備を身に付けており、システム上盗むことができないこの装備が、あろうことか盗める旨攻略本(しかも業界大手が手掛ける有名攻略本)に誤植掲載されてしまった事はゲーム通の間では語り草だ。

U野君はその攻略本、通称・黒本を所持しており僕も夏休みの間ずっと借りて熟読した記憶がある。恐らく誤った記述を鵜呑みにしてウソをついてしまったのだろう。

当時の僕はU野君が源氏シリーズを盗んだというホラ話を信じ、8時間にわたりエルムドアと戦い装備を盗むチャレンジを決行してしまった。

エルムドアが放ってくる強烈な状態異常攻撃は防具による耐性で跳ね返し、一緒に登場する雑魚は早々に蹴散らし、装備を盗む係のキャラクターにスピードを上昇させる補助効果を何度も何度も重ね掛けする。周到な戦術をもって、こちらは絶対の安全を確保した上で、エルムドアが1回動く前に5回も6回も盗むコマンドを浴びせ続けた。朝から夕方まで、挑み続けた。

プレステの電源を切った時に、アイテム欄に源氏シリーズの名が連ねられる事は、当然なかった。


卒業式と共にU野君と遊ぶ事は無くなってしまった。
お互い携帯電話も持っておらず連絡も取らず、離れた高校に進学した。

連絡網を見て家に電話をかけて遊ぶ約束を取り付ければ良かったのでは、とも思うが、僕と彼は学校で会って「今日お前の家行っていい?」と尋ねる以外には、遊びの約束を取り付けた事は無かったから、違う学校に進んだ時点で交友がなくなるのは寂しいけれど必然だったかもしれない。

三年間遊んだ仲なのに、それから連絡を取らないのはドライすぎると思うかもしれないが、U野君に限らず大体の仲間とこんな感じで疎遠になった。今でも連絡を取る中学の同級生は二名しか残っておらず、頻度も年に一回あるかないかだ。

卒業後三年間が経過し、PCとネット環境を手に入れた高校三年生の僕は、ゲームの知識の吸収に夢中になっていた。

自分の家にしかなく友達が持っていない、友達と話が出来なかったゲーム達の話題がネットの世界にはこれでもかと溢れていた。発売当時リアルタイムで友達と語り合う機会を持てなかったマイナーゲームの攻略サイトや、BBSにひたすら自分の世界を求めた。

そんな折に見つけたFFT攻略サイトにとんでもない一文を見つける。
それは「エルムドアの源氏シリーズは盗めない。攻略本には嘘が書いてある」という情報であった。
にんにくを食って大口開け、口臭をかまそうとするU野の顔が怒りと共に浮かび上がってくる。あのクソ野郎め。

いつかふと街中で会ったらエルムドアに盗むを実行した回数くらいビンタでもしたろ。
と誓ったが、結局それから彼に一度も出会えていない。