「あーーーっ!やってしまったのです!」
という言葉が突如頭に浮かび、しかも何故かヤケに気に入った僕は
常日頃から何かをやらかしてしまおうと画策している。
僕は最高に人畜無害である。
画策するだけなのだから、現実になることはない。
そう、画策するだけの自由がまだ現実には残されているじゃないか。
児童ポルノを所持していると、自動で逮捕される世の中だ
だが、僕らの思考回路までは政府に統制されるわけにはいかないんだ。
頭の中で、今日から始めるロリ婚生活。
9歳三ヶ月の幼な妻が、今日も笑顔で出迎えてくれる。
自分一人じゃ食事も作れず、風呂も沸かせず、布団も敷けない。
「ああ、だめじゃないか、ここはこうやって、仕方ないなー俺に任せな」
仕事量は独身の時より増えた、だが何故だろう、全く疲れた気持ちにはならない。
その生活には、今まで欠けていた何かが確実にある。
だから、幸せだ。
だが、水槽の金魚は今日も一匹、減っていた。
………!!
おっと、いけない…!足音だ!軍靴の音だ!
政府のヤツら、妄想ディテクターを片手に俺達のアジトを探しにきているぞ!
政府の役人の一人が、妄想ディテクターをチェックすると
そのモニターには大きな妄想反応が表示されていた。
この何の変哲もない居酒屋の地下だ。
そこに妄想族が…レジスタンスが隠れている。
妄想反応が最大値の赤色を示す。
そこに向かって投げ込まれる爆薬。
今日も一つのレジスタンスの隠れ家が、燻りだされたのだ。
ハーグ陸戦条約が書き換えられ、全ての武器の使用が許可された世界。
2096年、日本は妄想さえ許されず、全ての思考が政府によって統制された世界。
妄想族達は、ゲリラ的に散発的な抵抗活動をし続けていた。
未来はないかもしれない、明日はやってこないかもしれない、
凍りついたその世界の中で、僕は最後までかけがえのない思いを抱いて戦いたい。