へたれゲーム貴族

未知の世界への鍵(ゲーム)を手に。

とあるへたれの読書目録3 【家畜人ヤプー】

不気味で素朴な囲われた世界バカとテストと召喚獣

ときて、この流れならそろそろゼロの使い魔とかその辺り?
ってな感じですが、いきなり衝撃作を紹介することになっちまいました。

今回紹介するのは家畜人ヤプー かちくじん、と読みます。

珍しく、今回はラノベではありません。


家畜人ヤプー



















1956年 つまりは昭和31年に書かれた今から50年も昔の作品です。


本書との出会いは突飛なものでして、どこかの掲示板で
「女子高生が何か本を読んでいると思ったら家畜人ヤプーだった…ショックだった」
という内容の書き込みを見て、ヤプーとは何ぞや?と思ったのがキッカケでした。

書店にて偶然見つけ、購入し読んでみると…その内容たるや凄まじいの一言。


本書の内容についてはあちこちのサイトでも解説され尽くしており、場所によっては小難しく戦後思想が~やらマゾヒズムが~と長々書かれてたりするので、ここではズバリ、若者言葉で軽く、ライトな感じで紹介して

みたいと思います。僕も内容を深く理解しているわけではないので所々間違いがあるかもしれませんがご容赦を。

~こんなお話~
ストーリーは、現代に暮らしていたドイツ人女性のクララと、その婚約者の日本人留学生、麟一郎の二人がとある事件に巻き込まれて、ある未来帝国へ招待されるところから始まります。

その舞台とは今から2000年ほど未来の、未来帝国EHS(イースと読みます)。
第三次世界大戦の結果、白人絶対主義となり、黒人は奴隷扱いされ、アジア系民族で唯一生き残った日本人は奴隷以下の家畜・ヤプーと呼ばれ凄惨な扱いを受けるハメになっています。

ヤプーである日本人は、養殖管理され、肉体を加工され、様々な用途で白人に奉仕しています。

数えるとキリがありませんが、とりわけ衝撃的なのがセッチン(肉便器)と呼ばれるヤプーでしょうか。
元々は普通の人間と同じ肉体を持っていたヤプーが、肉体を加工され、知能はそのまま(むしろ遺伝子交配によりIQは非常に高くされている)で、白人専用のトイレとして利用されているのです!

セッチンに加工されたヤプー(何度も言うけど元は普通の日本人)は、白人のうんこやら小便やらを
自らの口で処理することに生涯を尽くさねばならないのです。

他にもこれでもか…と思うくらい我々日本人ことヤプーは「色々な用途に便利に利用されて」います。
特に矮人ヤプーといって、特別な処置を施され、手のひらサイズにされたヤプーが良く登場します。

例をあげると…
・靴の中に入れられて、履き心地を良くするヤプー
 常に足で踏まれているので寿命は一年くらいと短い。

・貴族の見世物として、殺し合いをする為だけに加工されたヤプー
 作中には一寸法師サイズで、真剣試合を披露したコジロ、ムサシというヤプーが登場。
 貴族はヤプー同士を決闘させて賭け事などをするのが趣味。

・生きた彫刻として、体に可塑性を持たされた加工がなされたヤプー
 作中では、大蛇に肋骨を折られ苦悶の表情をあげたところで肉体を固められ、
 半永久的に苦痛を浮かべたまま、貴族の目を楽しませる彫刻にされたヤプーが登場。

その他もろもろ、肉体を加工され、ベッドや風呂といった「生体家具」にされたり
人間犬や、人間馬としてペットや乗馬用にされたり、凄いものでは避妊具代わりに
加工されたりといった驚愕に値するヤプーまでもが登場します。

その全てが、生きたまま利用されています。



物語の主軸は、この恐ろしい世界に招待されたクララと麟一郎のうち、クララは貴族として待遇を受け、イースの事物を堪能し、麟一郎は日本人であることからヤプーと見なされ、肉体加工をされ家畜の扱いを受ける…

といった対照的な二人の視点が描かれます。

しかしどちらかといえば、作中ではイースの風俗史の解説・紹介に重点が置かれたような形になっており、主人公達の数奇な運命を辿るほかに、イースの世界観にどっぷり浸かる、といった楽しみ方もあります。
イース設立に到る経緯やその風俗史、様々なヤプー達の解説、古来の日本とイースの衝撃的かつ強引ともいえる事物の関係…(天照大御神は、実はイースからやってきたアンナテラスという女性の訛りである、などをはじめとして他にも衝撃的な記載が数多くあり、本書の出版に圧力がかかったほど)

この、イース社会を恐ろしい世界、と表現しましたが、確かに通常の観点から見れば日本人から見れば地獄にしか思えない世界ですが、イース社会は巧妙な支配によって、ヤプーはむしろ白人達に絶大な信仰を寄せ、加工され命を賭けて奉仕する事に生き甲斐を感じています。

そのグロテスクさとマゾヒズムが賛美歌を奏で渦巻いているかのような衝撃…

50年前に書かれたとは思えない、圧倒的なリアリティと想像力の奔流に翻弄されること間違い無く、下手に読み進めてしまうと精神が不安定になってしまうかもしれないほどの奇書です。


石森章太郎先生と、江川達也先生によって2回に渡る漫画化もされています。
江川版・家畜人ヤプーを読んで見ましたが、その衝撃に暫く頭から本書の内容が離れませんでした。
活字が苦手な方は漫画版を推奨します。
(自分は漫画→小説の流れでした)

~~~~~

この凄まじいの一言に尽きる大作SFの世界へ一人でも道連れにしてやろうとこの感想を書いたんだ。
刺激を求める方は是非一度本書を手に取ってみてはいかがかな。

健康な精神の方が、本書でショックを受けても当方は一切関知しない。

以上、へたれゲーム貴族より、家畜人ヤプーの紹介でした。