へたれゲーム貴族

未知の世界への鍵(ゲーム)を手に。

雑多文章録287 小さな貧乏デビルサマナー

小学生や中学生の頃は本当にお小遣いに困ったものだ。

今の中学生は月に1万円ほども平均して貰っているそうだが全く信じられない。
当事の僕のお小遣いは月1000円だった。

とにかくお金が欲しくて欲しくてたまらなかった。

そこで、労力の分だけある程度報われるお小遣い稼ぎの方法があった。

ずばり、自動販売機ハンターである。

別に自動販売機を破壊するといった犯罪行為ではなく、
自動販売機の下に落ちている小銭をひたすら拾うのだ。

小学生の頃は、夏休みの日課となっていた。

朝、6時には家を出る。
この時間帯なら犬の散歩をしている人くらいしかいないから、人の目もさほど気にならない。

炎天下、自転車で標的(自動販売機)を探してはひたすら下に潜る、潜る。
サーチ&デストロイ。

奥に落ちている小銭でも拾えるように木の棒を片手に作業をする。

歩いている人に声をかけられたこともしばしばあった
「やぁボク、大変そうだね。そんなとこにお金落ちてるもんなの?」
「たまに…」

とか返答するのだった。

毎日3時間ほどの作業で200円ほど稼げれば良い方で、
稼げる日には500円近く発掘したこともあった。

そのお金で駄菓子を買いあさって、
家に帰ると網戸を開け放った夏の風が通る部屋でスーファミを遊ぶのだ。
セミの鳴き声をBGMに、女神転生シリーズに夢中になってた小学生の夏。

毎日冒険のようだった、子供の頃の夏。
魔法は使えないけど、コンピュータで悪魔を呼び出すことが出来る、という設定で
ケルベロス(自転車)の背にまたがって自動販売機を探した、冒険の夏。



…そんな「俺」は、今やお金ばかりがあって、時間のない社会人になってしまった。

ふと、自動販売機でコーヒーを買おうとして、100円玉を落としてしまった。

…しゃがんで手を伸ばすのがだるい。
それは小さい頃あんなに夢中になっていた行動。

財布からもう一枚、100円玉を取り出してブラックコーヒーを買う。

俺が今落としたこの100円は、あの頃の「僕」のような誰かが冒険の軍資金にするのかもしれないな…。

そんな風に考える。
夏の足音が近づいてきた、日だった。