へたれゲーム貴族

未知の世界への鍵(ゲーム)を手に。

とあるへたれの読書目録1

急に発足したこのコーナー、要するに僕の読書感想文です。
元々あまり本は読まないし、読書感想文もへたレベル(へたれレベルの略)ですが
読後に感慨深いものが残った作品はここにて感想文をしたためることとします。


かこわれ












不気味で素朴な囲われた世界
著者:西尾維新






僕は読書不足なので、本に対する視野は狭く、井の中の蛙にも等しいが
それでもあえてで書かせていただくとすると、この西尾維新という作者は
奇人っつーか変態を書かせたら右に出る者はいないのではないかと思わせられる。

むしろ維新キャラに慣れると他の本の登場人物が皆平凡に見えてしまうという錯覚すら抱く。

この反則的なキャラクター性を持つ登場人物のやり取りを見ているだけで
一駅や二駅くらい乗り過ごしてしまうほど僕は夢中になってしまった。

本書の位置づけについて、ウィキペディアでもライトノベルなんだかミステリー小説なんだか
良く判らない書き方をされていたりする。
内容的にはミステリー小説に分類されるであろうが、キャラクター小説としての側面も強いからだろうか。

主人公の串中弔士くしなかちょうしは自らの日常を囲われた世界と称し、非日常を求め様々な行動を起こす。

例えば、いつも食べている昼食の弁当をわざと家に置き忘れてみる。
結果、その日彼は友人の昼食を分けて貰い、放課後には
姉が弁当をわざわざ届けに来るというイベントが発生する。

そう、弁当を置き忘れた事で"いつもと"違う事象が発生したのだ。
まだまだ平凡な日常のひとコマに違いない出来事だが、彼は非日常を体験するため、
こうした「世界を変える為の小さな革命活動」を実行し続ける…
そして唐突に事件は起こり、彼は彼の望む非日常へと巻き込まれていく…


彼は行動自体こそ突飛だが、日常を打破する為に行動を起こすという姿勢には
少なからず共感を覚える読者も居ると思う。
奇人だらけのこの物語の中で、共感を覚えられる程度には常識人に見えるという意味でもある。

個性的すぎて共感すら出来ないキャラが頻繁に登場する中で、
主人公のキャラクター性はそれほど強すぎず、弱すぎず、敢て言えば平凡的なキャラにも感じる。

…本書を、読破するまでは。
…本書の最後を飾る主人公のあるセリフを読むまでは。

直接的なネタバレにはならないと思うので理由を述べると、彼はこの作品随一の思想犯であるからだ。
共感を感じえたキャラクタが、まさか掛け値なしの奇人ともいえる思想を持ち行動していた…
その事実を知った時、改めて作者の天才的なキャラクタ造詣に打ち震えた。

作者のデビュー作でもあり、人気タイトルの「戯言シリーズ」に登場する主人公こといーちゃん
ライトノベル誌でもキャラクター人気部門首位を飾るほど造詣深いキャラクタではあるが、
僕にとっては本書の串中弔士ほど、心を震わせてはくれなかったかのように思う。

いや、むしろ串中弔士の思想に、奇人性に底知れぬ魅力を感じる僕(読者)は
僅かばかりに奇人としての性質を持ち合わせているのかもしれない。
そんな錯覚すら抱く、どこからどこまでも奇人だらけのミステリーノベル。

不気味で素朴な囲われた世界

最初の30ページほどで既にこれでもかというくらい西尾維新のエッセンスが詰まっている。
個人的には戯言シリーズよりも西尾維新入門の書として名前を挙げたいところである。

純粋に読み返したくなる小説は、良書だ。


備考:表紙絵は登場人物の一人、病院坂迷路。
こういった奇抜なネーミングセンスも維新の魅力。


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余談ですが、高校時代僕の友達が某ロードムービーラノベで読書感想文を書き
読書感想文大賞として校内表彰された時にはビビりました。
読書感想文にラノベを選んだ友人の挑戦的な姿勢、校内表彰されるに至る感想文の構成力、
作品に偏見を持たない学校側、3つのうちどれが欠けていても成し得なった奇跡ではないでしょうか。
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