<思いつきのみで突き進む謎ストーリー第4面
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登場人物。
被告:主人公
かよこ:謎の人。財界に多大な影響を持つ凄い人。
ナナ・イチ:かよこの部下
Nebula:限られた手段でのみ連絡を取る事が出来る伝説の傭兵
あらすじ。
刑期159万年の国家指定咎人「被告」は琴弾財閥よりある至宝を盗み出す。
至宝の起動キーである3つの超物質の1つを餌に、かよこの腹心であるナナ・イチは
電脳世界戦闘が制限された地域へ被告をおびき出すという、至宝奪回作戦を開始する…!
もう、うんばらほ。 ==== -----------
電子管理庁により緻密に整備された電脳世界…
ある程度のレベルにまで、電子情報技術に精通さえすれば
生活の全てを電脳世界を通じた網で賄う事が出来る、未来の究極形態に達した世界。
だが、構築されたその世界が緻密すぎた事が仇となり、管理は完全に行き届いてはいなかった。
稀にハイレベルなハッカーは、己の存在までを電子化させ、(一歩間違えればデータ化した己自身すら削除されかねないが)電脳世界上での活動すら可能とする。
国家指定咎人…被告こそ、電脳世界活動、及び戦闘のトリックスターと呼ばれた生きた伝説。
電脳世界に干渉しての、現実の
魔法とも奇跡とも等しい現象を引き起こす事が可能な危険な存在だ。
無論、これら奇跡の類を、電脳世界上の管理サーバをハッキングする事により可能とするハッカーは
被告以外にもごまんと存在している。
しかし、被告と彼らとは数段格違う。
比較は痴れた者がすることだった。
恐らく、電脳世界上に自身を存在させる事が不可能なネオ・タナシ・シティの電脳世界環境においても、
肉弾戦に持ち込んだところで何かしらの手段を以ってして、直接的な肉体の戦闘を補助する身体超化、及びその他の情報改竄術にて対抗してくる可能性は100%。
かよこの腹心として、戦闘技術を嗜んでいるとはいえ、ナナ・イチ一人では被告を
だから、彼は全ての覚悟をもって、己の私財全てを投げ打ち、最強の傭兵を同伴させるという手段を採用する。
余談だが──
既に遠い過去の通信技術である携帯電話は、既に端末の形にのみ名残を残すだけのアンティーク品であり、
一応通信は可能ではあるが、電波は使用しておらず、他の通信技術と同じく
電脳世界網を利用したものとなっている。
「…一応、電脳網が余り整備されていないタナシ・シティでもケータイ・デンワくらいは使えるのか…」
ナナ・イチの呟きは宵闇の冷たい風と同化し静寂の中に吸い込まれていく。
伝説の傭兵とコンタクトを取るべくして、端末に指を添えたその時であった。
「依頼主、ナナ・イチか」
「…あんたは、いつの間に…!?」
これが、伝説の傭兵なのか。
いや、故に、伝説か。
ナナ・イチは未だ携帯端末に指を添えただけ─
この傭兵を呼ぶ為の一切の情報伝達手段を使用してはいない。
闇の中で、なお闇を纏い、現れた彼こそは、被告と共に双璧を成す生きた伝説。
依頼主の意思にて参じ、正しく、決戦の時を誤ることなく、
絶対の信頼と、絶大な希望と共に現れる戦士。
「驚いた…伝説の傭兵だけは、あるな…これなら、言う事はなさそうだ…何も」
相対する敵対手の事も、報酬の事も、恐らくこの存在には告げるまでもないのだろう。
何ということだ、これではまるで、こうなる前から、被告がコトダンハートを盗みだす前から、
いや、オレが生まれる前から 彼とは今日の契約が成立していたのかもしれない──
──
ナナ・イチの言葉が静寂を破る。
「相手に…被告に俺の情報が伝わって、ここに来るまでに後、
計算上、一時間強あるんだが…伝説の傭兵さん、何か準備でもあるのかい?」
最悪コンタクトが取れない事を想定していたナナ・イチは万が一、
一人でも戦えるように万全の準備を期している。
黙したまま決戦を待つだけのようにしか見えない伝説の傭兵を前に、
持て余した時間を少しでも削り取る目的が半分、純粋にこの相手と対話をしてみたいという好奇心半分だった。
伝説の傭兵は答えるに口を開く。
「コロッケだ」
「………え?」
昼間にネオ・チバタウンにて惣菜屋に半ば押し付けられる形で買わされたソレは
到底一人で食べきれる量では無く、この決戦を前に幾つか残したまま、デジタル・インベントリへと
保存しておいたまま冷え切ってしまっていた筈だ。
「貴様は冷えたままコロッケを食うつもりだったのか?」
伝説の傭兵の予想だにしない言葉に、惑いつつも電脳網へアクセス、デジタル・インベントリに干渉し
カニクリームコロッケの袋を取り出すに、ナナ・イチは紙袋の熱に軽く指を引いた。
「戦士には準備が必要だ。武装を揃え、戦術を
準備とは、戦闘する者自身の体と、精神の事だ。一時間という時間は俺よりも、お前の準備のために残した時間だ。」
そう呟いた伝説の傭兵は片手でポテト・フライを口元へせっせと運んでいた。
─被告との決戦を前に、精神が張り詰めていたのは確かである。
そんなところまで、
そんな驚愕の隙を突いて、伝説の傭兵がもつイメージとのギャップに思わずナナ・イチの口元が弛緩する。
そのまま緩んだ口を開け、残ったカニクリームコロッケを頬張る。
刻が、緩やかに流れていく。
この後に命をかけた戦いが控えているとは思えないほどに。
緊張しきっていた場の空気が、肉体が、精神がほどけた頃にナナ・イチは
「そういえば、この戦いの間だけかとは思うが…あんたのことをなんて呼べばいい?」
「Nebula、フィオーレ、
色々な奴から、色々な名前で呼ばれていた。貴様の好きにするがいい──」
彼の言葉が、途切れぬうちに弛緩していた空気の流れが一転する──
空間が歪む、この
その俊敏、小数点以下。
伝説の傭兵は瞬時に
歪んだ空間の僅か下方に向けて火砲を炸裂させる。
古代種に該当するクラスの竜一匹を、一撃で吹き飛ばす威力を誇る火砲。
轟音と閃光が闇という闇を全て切り裂き一瞬だけ立ち昇った灼熱の魔力が周囲を灰燼へ帰した。
「うはー 大層なお出迎えだお…私も花火は大好きだけどね、季節が違うんじゃないかなぁ」
固定化され、防御という指向性を与えられた大気の層に爆風は防がれた。
その術者たる存在である第三者が、優雅な仕草で地上に降り立つ。
電脳世界へのアクセス制限は圧倒的に厳しいこの区画においても尚、
ただの大気を空間干渉術にて強固なバリアと成すほどの神懸った電脳干渉の腕前。
この世界に、唯一人。
「…Nebula、予定より早いが敵さんが来なすったようだ──」
─続く─