へたれゲーム貴族

未知の世界への鍵(ゲーム)を手に。

ひこくえすと3



<行き当たりばったり思いつきストーリー第3場面
 今までのシーンはブログ左側の「ものがたり」タブからどうぞ>

登場人物。
被告:主人公
かよこ:謎の人。財界に多大な影響を持つ凄い人。
ナナ・イチ:かよこの部下

あらすじ。
刑期159万年の国家指定咎人「被告」は琴弾財閥よりある至宝を盗み出す。
電子世界を通り逃走を計る被告に、琴弾財閥の差し向けた25人の最高裁BAN官が迫るが
電子世界での戦闘において被告に敵うものはいなかった。

葬られた25人の最高裁BAN官に代わり
今、かよこの腹心であるナナ・イチが被告の追走を開始する・・・!

もう、うんばらほ。 ----------------

ネオ・チバタウンの繁華街を歩く緑髪の青年。
全身を金属音の擦れ合うファッションに身を包み、流線型のサングラスで表情を隠している。

着用するものがどのような者であれ、威圧感を容易に纏わせる服装にも関わらず
知的なイメージが先行している彼の名前は、ナナ・イチ。

本名ではなく、本名を知る人物も不明。

琴弾財閥総帥である、かよこと名乗る人物の部下にあたる。

…財閥の一部の管財を任されていたナナ・イチは、
自らが管理する電子人格・リスレの戸籍をナメック星と登録していた事により
電子管理庁による不正登録処分アカウント・バンを受け、
リスレにより管理がなされていた財産までもが全て失われてしまった。


その失態を埋めるべく、琴弾財閥より盗まれた秘宝「コトダンハート」を取り戻すという
勅命をかよこより受け、彼は今ここ、故郷であるネオ・チバタウンの雑踏の中
その方法につき一歩、また一歩思いをめぐらせる。

惣菜の宣伝が、叩き売りの大声が、活気と騒音そのものが飛び交うこの街で、
彼一人だけが静寂を連れて歩を進めていた。
喧騒がそのまま街の形を成しているといっても過言ではない故郷だが、
生まれた場所故に一番落ち着く場所でもあった。

「ほら!カニクリームコロッケ安いよ!」
「あ、一つください」

ソースは別売りか…と、シンプルな油だけの衣の味を舌に染込ませる。

被告により盗み出された秘宝、コトダンハートに秘められた力は未知だ。
どんな奇跡を起こす事が可能な代物かもわからない。

絶対に取り戻さなければならないが、
戦闘行為自体が本業ではないナナ・イチ自身が被告に戦いを挑むのは自殺行為にも等しい。
それが、電子世界戦での話となれば尚更である。

唯一の救いは、コトダンハートの奇跡の起動はそれ単体では成し得ないという一点につきる。

秘宝のキーとなるエネルギー体が存在する。
コトダンジャック・コトダンスペード・コトダンダイヤと呼ばれる三つの超物質。

その存在は次元を超えた方法で隠匿され、
かの被告の情報能力を以ってしてもたどり着く事は困難であるという。

…被告をおびき出し、始末する為に今、ナナ・イチは捨て身の覚悟をもち
超物質のひとつコトダン・ジャックをその魂へと封入している。

コトダン・ジャックの所在をちらつかせれば、被告は間違いなくナナ・イチの肉体を滅ぼし
直接魂へハッキングを試みてコトダン・ジャックをその手に収めようとするだろう。

カニクリームコロッケが胃袋に収まった。
彼は、作戦を開始する。

─── 20xx年 x月 xの日 21:00 ネオ・タナシ・シティに於いて

未来技術の集大成と謳われるニュー・トーキョーにおいて電子世界網が確立されていない唯一の都市
それがこのネオ・タナシ・シティである。

電子世界網へのアクセスは可能だが、直接生体自身をデータ化し、存在させ、活動させるといった
高度な管理技術を都市部マザーサーバーに備えていないこのネオ・タナシ・シティにおいては
被告であろうと、ほぼ戦闘行為を直接的なものに頼らざるを得ないことになる。

ここにて被告をおびき寄せ、直接的な戦闘を展開し、コトダンハートを奪い返す…

それがナナ・イチの覚悟せんじゅつであった。

この街の郊外
闇と、静謐の中で、ナナ・イチは携帯電話を取り出した。
携帯電話とは、通信技術としては百年単位の過去の技術であり、今では趣味のアイテムアンティークとして
奇特な僅かな人々が所有するだけのものであった。

その、限りなく風化した通信技術においてのみ、唯一依頼が可能な凄腕の傭兵が存在していた──

「Nebula」「フィオーレ」「師匠」数々の呼び名を持つ最強と名高い、闇のソルジャー…
彼と、ナナ・イチは今コンタクトを取ろうとしていた。

      ─続─