せっかくですのでうpします。
登場人物
被告:主人公
かよこ:謎の人
ナナ・イチ:かよこの部下
あと、かっこいいタイトルあったら募集します。
出演希望の人とかいればどうぞ。
闇の中、タイピングの軽音を響かせているのは痩身の男。
端末の液晶画面から放たれる微光のみが唯一の明かりである
この部屋において、何故かサングラスをかけており、その表情を窺い知る事は出来ない。
「我らが琴弾財閥の至宝を盗み出すとは、とんだ命知らずかと思ったのだが…」
男の背後、一切の音を発生させる事もなく数人の黒衣の人間が姿を現した。
「ナナ・イチ様。追撃の準備が整いました」
「行け」
「御意」
黒衣の人間達は無音にて姿を消す。
「面白くなってきた」
端末に映し出されたインフォメーションを見つめながら男が呟く─
: 国家咎人 No.159
: Code-Name.コンバット被告
: 好きな食べ物:蕎麦、カレー
─賽は投げられた。
159万年の刑期を持つ一人のカリスマと、
国家そのものと謳われる巨大財閥。
歴史を変動させる影響力を持った両者が、今衝突しようとしていた。
* phase1 *
「くそ、こんなところまで追撃してくるなんて、正気の沙汰ってレベルじゃねーぞ!」
ワイヤーフレームで構成された次元空間を疾走しながらその者は呟いた。
天下に名を轟かし、地球有数の歴史の中でも「国家咎人」クラスに指定された数少ない超級の存在。
本名不詳、本性不詳。少年とも少女とも取れる中性的な顔立ちに、均等の取れたその体ですら、
その者自身が、自分の容姿を「現在はそのように構成している」だけに過ぎない。
表の世界でも、裏の世界でも通じて呼ばれる通称は"被告"という。
─被告と同じく、天下に名前を轟かせる琴弾財閥というグループがある。
金融、金属、電子、船舶、航空、あらゆる産業界にて絶大な影響力を持つ第六次世界大戦後きっての大財閥であった。
「ただちに立ち止まれ、被告」
「今、この場で逃走を停止すれば1500年の追加刑期で済む」
一般人であれば、聞いただけで全身を重力で束縛され直ちに
行動不能となる魔力を帯びた呪いの声が被告に語りかけられた。
被告の周囲の空間が歪み、黒衣の人間達がその場へ現れる。
「ち、裁BAN官かおwww」
その黒衣の人間──
一人ひとりが、たった一人で発展国の法務を全てこなす事のできるとさえ呼ばれているS級の最高裁BAN官だ。
その25名全てが、琴弾財閥の至宝を盗み出した被告に対しての追走に仕向けられていた。
「もう一度言う」
「逃走を停止せよ」
被告は後ろを振り返るまでもなく、電子知覚により完全に自分が包囲されている事を悟った。
電子空間上に時空演算をかけ、確率論理を用いる空間跳躍術は
禁呪のランクにまで到達しており、現時点で満足に使用が出来る術者は自分だけだと思い込んでいた事が仇となった。
「琴弾財閥ってのが、ここまで容赦がないとは思わなかったお…
まさか、私一人を捕まえるためだけに、自分の手駒に禁呪の魔導書を閲覧させるなんてお」
黒衣の25人、各々が懐から六法全書を取り出し、指でページを固定。
裁BAN官が保有する戦術的姿勢の一つ
国家咎人に対するBANの構え。
「もはや君には発言権すらなくなった」
「実力により君を裁く事にする」
急激に電子空間上のトラフィックが増大化していく。
ただの一撃で、撃たれた罪人に地球上全ての刑罰による苦しみを与え、
666度輪廻転生を繰り返させ、魂の穢れを落とし再度転生させる裁BAN官の攻撃司法の詠唱によるものだ
「───LAW!!」
各々が発動の周期を小数点以下の時間で僅かにずらし、25の魔弾が次々と放たれた。
空間を跳ね、捻り、歪曲させ、あるものは真っ直ぐに、
あるものは弧を描き、被告めがけて疾走する─
鼻先に迫った死の呪文に対し、被告は唇のはしをつりあげ不敵に微笑んだ。
「この私に─」
被告の肉体に内臓された無数のCPUが駆動音を上げる
「電脳世界で戦いを挑もうというのかお──」
身体超化のプロセスを
数にして159の多重起動を実行。
同時に、対法律防御のプログラムを立ち上げ、肉体を司法憲兵戦用のものに瞬時に作り変える。
全身のCPUが悲鳴をあげ、瞬間的にメモリ使用量が200%を突破する─
「なに─」
「そんな筈は」
放たれた25の魔弾、その全てが必殺必中の法により強化された必滅の攻撃司法であった。
魔弾により削り取られた空間に被告の姿は無かったが、裁BAN官25人の持つ誰の六法全書にも
攻撃司法命中のインフォメーションが表示されていなかった─
「とろすぎてあくびが出そうだお^ω^」
「─!!」
裁BAN官No.11の胸部から銀のスプーンが露出。
億千万の思い出とともにNo.11はその肉体を爆裂させ、
全身を0と1の無意味な文字列へ情報変換させてその生涯をたった。
「これでも─まだ、やるのかお?」
全ての判事に置いて一切の表情を変えないとうたわれる黒衣の集団に
かすかな動揺が走るのを被告は感じた─
つづく(多分)