へたれゲーム貴族

未知の世界への鍵(ゲーム)を手に。

Gショックのお話

俺の自転車の右ハンドルの内側には、Gショックがぶらさがっている。


自転車で高校に通学する時、遅刻しないようにと携帯で時間を確認していたのだが、神経質に何度も時間を確認する俺はポケットから携帯を取り出すのが面倒くさくなってしまった。
かといって腕時計を巻くのが何となく嫌い(腕に変な違和感あるし)だった事から、「じゃあココに時計つければ解決じゃん??」と思ってつけたものだった。

自転車を漕ぎながら、視線を落とせば時間が確認出来る。
我ながら素晴らしいアイディアだった。

学校だけじゃない、自転車であちこち徘徊するのが趣味だった俺はこのGショックに何度も世話になった。
自転車に取り付ける前も本当に大事にしてた。
中1の臨海学校では消灯時間後お世話になった。
家族旅行に行く時や、修学旅行に行く時も細い俺の腕に似合わない無骨なコイツをつけてった。



──いつからだろう、コイツが時を刻むのを止めてしまったのは。



今乗っている自転車は、あの頃と同じ自転車だ。


教科書の入ったリュックの代わりに、今では書類の入ったカバンを乗せるカゴ。
そのカゴも、今では煙草の灰で少し煤けている。



今も、Gショックは沈黙を続けたままだ。
ときおり無性に、コイツが時間を示してくれていたあの頃に戻りたくなる。



いつか仕事が落ち着いて、心にも余裕が出てくるようになったら、
コイツを少し修理してやりたいと思う。



もし直ったら、また一緒に同じ時間を刻もう。


「いつまでも寝てやがって、お前の寝ていた間本当に色々大変だったんだぜ?」


そんな風にいってやれる日が、待ち遠しい─。