金曜土曜と二日続けて観てきたにも関わらずもう一度観たくて仕方ないという気持ちにさせられている『劇場版ウマ娘プリティーダービー 新時代の扉』。
数々のシーンとその感動を自分の中で再度確認したくてたまらないため、今回はネタバレ有りでこの映画について好き勝手語ってみます。
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:レースシーン
詳細にシーンが描かれているだけでも弥生賞、ホープフルS(ラジオたんぱ杯)、皐月賞、日本ダービー、ジャパンカップと、幾つものレースが登場する本作。アニメ1期~3期とRTTTも加えて、さすがに人型の女の子がこれ以上かっこよく走れる演出はネタ切れではないだろうか?そんな風に思ってしまい本当にすみませんでした!という気持ち。引きを使って彼女たちのスピード感を見せつけたり、カメラアングルとエフェクトを見事に駆使し今まで以上の迫力のレースシーンを作ってくれました。これは脱帽です……。
:二人の主人公にかけられた呪いが氷解するシーン
ホープフルSと皐月賞でタキオン(アグネスタキオン)に先を行かれ、「自分の方が強い事を証明する!」と啖呵を切っておきながら、彼女から一方的なレース出走の無期限休止を告げられて勝つ事は見果て夢となってしまった主人公ジャングルポケットことポッケ。
ポッケは日本ダービーを勝ち、タナベトレーナー陣営のダービーウマ娘輩出という夢を叶えるも、最も有力視されていたタキオン不在の中での一着。その心の陰は大きくなってゆく。ポッケが抱える呪いは、永久に追いつける事のない、先を行くタキオンの幻影。
タキオンはかねてから脚部に不安を抱えているように描かれ、皐月賞のラストスパートでガラスのように砕け散る脚の描写。彼女はこれ以上自分が走る意味はないと考え、レースへの出走を無期限休止する。ウマ娘という種族が走る先には一体何があるのか、ウマ娘の真理とは。自らが走らずとも、ポッケ達がいずれそこに到達する、と。彼女らなら自らの代替品となりえると。ゲームアプリ版と同じ「プランB」を選択するタキオン。
ポッケやカフェ(マンハッタンカフェ)の走りを分析している最中も、その脚はどこかへ走りたそうにせわしなく揺れていた。走るために生まれてきたウマ娘という種族の本能が、タキオンにとっての呪いなのだろう。
そして迎える大詰めのジャパンカップ。
フジキセキからの発破、そして自身の精神力によりポッケは己を縛る影を打ち破り、新時代の先を行く。
観戦していたタキオンもまた、「いずれ私の代わりにウマ娘の真理到達する者は現れるだろう。だがそれでよいのだろうか――いや。真理へは、自分の脚で――」と気が付けばレース場を駆け出していた。
彼女達を縛っていたそれぞれの呪いが、二人の咆哮が重なり合い砕かれる。
本映画の最高のシーンだと思います。
ここを観るためだけにもう一度観に行きたいといっても過言ではないくらい、自分に突き刺さった場所でした。
:フジキセキのポジション
4戦4勝にて引退したという立ち位置はタキオンにも似たフジキセキ。
本作の最初のレースシーンは彼女のもので、その走りに憧れたポッケがトゥインクルシリーズの扉を叩くというのが映画の導入。
タキオン同様に脚部への不安から、ダービーへの道を歩むことは出来なかった彼女の先輩ポジションとしての役割が本当に良すぎます。
ウマ娘が歩む道はトレーナーと二人三脚の道のり。自らが栄冠にたどり着けなかったというのも勿論ですが、タナベトレーナーへダービーのトロフィーを与えてあげられなかった事も悔しく辛かったでしょう。
そんな彼女がポッケへ夢を託し、葛藤するポッケに発破をかけ、そしてまた自分もポッケと同じ夢を見ようと奮い立つ。「ナベさん」呼びから「トレーナーさん」呼びへと変わる瞬間。
こんなに素晴らしいサブヒロイン的なポジションがあるでしょうか。フジトレは絶対見逃せないレベルの会心の役回りが与えられていましたね。
:カフェ推し視点
一方、マンハッタンカフェ推しの自分としては彼女にもう少しフォーカスしてほしかった気持ちも!
オトモダチへの執着に対しては描かれていたので、ここに何らかの形で一つ回答を出して欲しかったとも思いますね。
菊花賞がサラっと流れたところは惜しいと思いつつも、個人的にはこれはこれでアリ派。あの頃のポッケは周囲が見えていない状態に陥っており、気が付けば負けていたという描写なのでしょう。
ラストのライブでの表情は天使かな?ってくらい優しく柔らかい笑顔なので必見です。
:そのほかの感想
ダンツフレーム。ポッケのようなスタイルやフォーム、切れ味は持っておらずあと一歩で勝ちきれなくとも、だとしても勝利の栄冠を求めて何が悪いのか。ウマ娘の「勝ちたい」という渇望を伝えてくれるキャラクター。彼女もまた非凡なウマ娘であるのよね。
テイエムオペラオー。圧倒的な「覇王」としてポッケに有馬記念での包囲網突破劇を見せつけ、ジャパンカップではラスボスとして立ちはだかる。細かな掘り下げはされなかったキャラですが、本作からウマ娘に触れる初見の人にも「この荘厳な勝負服と圧倒的な強さ、まさにラスボスなんだな」と分かるデザインと立ち回りをしているのはマルですよ。一見薄味に思えるオペラオーの描き方ですが、ジャパンカップで必要だったのは、己を縛り付ける呪いをポッケが打ち破る事でした。その物語に登場する役者としてはベストに近い描かれ方だったんじゃないかと思います。
ポッケ団3人のルー、シマ、メイもポッケ陣営の思いを代弁してくれたりと、良いキャラクターでした。
調べてみたところどうやら3人ともジャングルポケット産駒の競走馬が元ネタになっているみたいですね。
ルーは「オウケンブルースリ」
シマは「オマタセシマシタ」
メイは「ジャガーメイル」と「トールポピー」の説があるようです。
彼女らにも今後何かでまたスポットライトが当たったら嬉しいです。
緒方賢一さんが演じるタナベトレーナー。宿願のダービーを手にした時の「ほわぁ」と目を見開いた表情に思わず涙。ウマ娘達との距離感も良かった。ちょっとしたお小言は言いつつも、本質は優しく包み込むように穏やかで大きな精神を持ったトレーナーでしたね。
アプリ版のキャラクターも多数出演!ハッピーミークやリトルココン、ビターグラッセといったウマ娘達も出ていて、ゲームを遊んでいるトレーナーへのサービスも惜しみなかった。何度も繰り返し観たくなってしまいます。ミラ子の食欲が怖すぎる。ふわふわマイスターと化しているアヤベさんが面白過ぎる。とんでもねぇ。
:次回観る時に注目したい箇所
まずはサンキャッチャー。
作中に登場するポッケの象徴的なアイテムとして、サンキャッチャーのネックレスがあります。フジキセキの走りに魅了され、夕暮れ時までレース場で余韻に浸っていた彼女が、ネックレスを放り投げそれを掴むという印象的なシーン(最強を掴め。の扉絵カットですね)から始まるこの物語。
それ以降も度々このネックレスが登場します。彼女の心が晴れ渡っている時は美しく光を反射し、葛藤に悩む時には置き忘れられてしまうシーンもありました。
このネックレスは間違いなくポッケの心境とリンクさせた描かれ方をしているのですが、なにぶんこの映画には見どころが多くてこのネックレスのシーンは「あっ、ポッケの心を表してるんだな~」くらいにしか観てる時に意識配分がいきませんでした。
次回観る時はサンキャッチャーの輝き、そして曇り(?)にももっと注目したいですね。これ、タキオンの部屋にも同じものがぶら下がっていたのでそっちも次回は注意して見てみます。
次に夏祭りのシーンです。
夏祭りというと無条件で楽しいイベントのはずなんですが、全体的な絵面が、どこか歯車が嚙み合っていない印象を受けました。金魚すくいの網は破れるわ、ラムネは上手く泡立たないわ、なんだかアングルも不穏。メンタリティに問題を抱えたポッケの内面を表しているのは明白です。一見楽しそうな場面が主役の心理描写に伴いどこか陰を伴って描かれているというのは、アニメ2期のトウカイテイオーの一人遊びを彷彿とさせますし、非常に巧みな演出でした。華やぐお祭りとは裏腹に暗示を孕んだこのシーン。もう一度隅から隅まで目を光らせて堪能したい。
:総評
圧倒的疾走感で描かれる迫力あるレースシーンと、ウマ娘達の努力、勝利、苦悩、葛藤、夢、そして本能。
素晴らしい映画だったと思います。
今週末さっそく3回目を観に行く予定です。
少しでもウマ娘というコンテンツに興味がある方はぜひぜひ。
既にアニメやゲームでコンテンツに触れている方はぜひぜひぜひ。