へたれゲーム貴族

未知の世界への鍵(ゲーム)を手に。

アーケードゲームと缶ジュース

缶ジュースが好きだ、缶ジュースにプレミアを感じる、缶ジュースは青春だ。
アルミ缶も好きだが、スチール缶が最高だ。


当時の僕はゲーセン少年だった。
1000円にも満たない月の小遣いをやりくりして、駄菓子屋ゲーセンでメタルスラッグXやX-MEN VS. STREET FIGHTERに興じ、GEOのゲームコーナーに置かれていたKOF'97では何度も八稚女のコマンドを練習したものだ。

中学一年生になると放課後の戦場を東伏見駅前の50円ゲーセンに移した。
そこで僕が見た常連の猛者達にはある共通点があったのだ。

怒首領蜂だけを執拗にやり続ける作業着の兄ちゃん…筐体には積まれた50円と缶ジュース。
パワーストーン2を遊んでいると高確率で参戦してきたあやめ使いのサラリーマン…身を乗り出して向こうを覗くと手元には缶コーヒー。
D&D SOMの攻略法を親身になって教えてくれた師匠ともいえるおじさん…レバーの真横には細身のスチール缶。

つわもの達は常に、缶飲料と共にあった。
50円ゲーセンにおいて、プレイ料金の倍額を誇るそれを必ず従えている。
金銭事情から、よほど特別な事が無い限りプルタブを捻る機会は訪れなかった。
少年の目にそれは、飲めばゲームが強くなる霊薬のように映った。



歳を重ねた。
缶ジュース達も値上げという形で時代と共に老け込んだ。
もう100円や200円はあの頃からすれば端金で、缶を積み上げるのは造作もない。

だとしても僕にとってその値打ちは何ら変わっていない。
筐体には自販機の取り出し口から出てくる相棒と一緒に座る事にしている。
出来ればスチール缶のコーヒーがいい。
あの日の風景に存在していた彼らの背中を追える気がするから。


缶ジュースが好きだ、缶ジュースにプレミアを感じる、缶ジュースは青春だ。
アルミ缶も好きだが、スチール缶が最高だ。