へたれゲーム貴族

未知の世界への鍵(ゲーム)を手に。

ニドですがロードとしての旅が最悪です 【最終章】 冒険38日目~

        とあるロードの冒険記
 ニドですがロードとしての旅が最悪です ~8 Excellent~

前回の3行あらすじ
・ゾンビ
・くさい
・キムコ


●冒険38日目
両脇にキムコジャイアントを挟んだせいでゾンビが1速になってしまった。
4速→高速でキムコが落ちる
3速→50mくらい走ったところでキムコが落ちる
2速→キムコが落ちない!いけるか?と思ったらいつのまにか気付かずに落ちていた
結局1kmくらい戻ってキムコを拾いにいった。その間臭くて全滅しそうだった。

というワケで1速に落ち着いた。
俺はワクワクしながらゾンビのスキル欄を見たが、アルカナスキルは無かった。

今日はかなり進軍したせいで皆バテてすぐに寝てしまった。

セルケトの残りを鍋の具につつきながらカイムと二人きりになる俺。

「お前、本当に無口だよなあ」
「…」
「もう何日も一緒に冒険してるけど、一度もお前の声を聞いたことが無いなあ」
「…」
「初日のカラオケも、俺が一方的に桃井はるこオンラインだったしな」
「…」

本当に無口なヤツだ。
でも不思議と険悪な雰囲気ではない。

カイムがジェスチャーで、自分の喉を指差しながら何かを訴えていた

「あ………!気付かなかった…!もしかしてお前って………!」

なんで
なんで俺は気付いてやれなかったんだろう…

カイム…すまなかった…俺は…!



「ごめんな、ハイ、のど飴」

冒険初日から喉がずっと痛かったんだね。
気付いてやれなくて、ごめんな。

心なしかカイムの表情が切なそうだったけど
そりゃずっと喉が痛かったら切ないよな。

俺って本当にバカだ。
反省。


●冒険39日目
雲海の壮麗な眺めに俺たちは圧倒された。
もうすぐザフーの石段も登りきりそうだ。

この先に…アルカナの力を宿したロードがいる…

そうだ。
俺の目的はアルカナの力を集めること…
その為に今日までロードとして実力を磨いてきたんだ。

どんなヤツが相手でも、きっと打ち砕く。
そして、この世界を──

決意を瞳に宿し、歩を進める。



「ぬう!今のはノーカンだぞ!」
「うるせえな、飛車取り。さぁどうすんの」

確かに俺は盤面で「歩」を進めていた。

前々からドゥクスとの将棋がブームだ。

香車の代わりのミサイルという駒が凄く手ごわかった。
相手の駒を取るプラス周囲3マス全部総取りとか意味わかんねぇ。

でも勝てそう。

「ハイ王手。詰みだぞ。1000サールな」
「私のキャバクラ代が…」


俺たちは来るべき決戦の匂いに備える。
剣を磨く俺とカイム。
気弱な表情は隠しきれないが、確かな決意を内に秘めたインキュバス
最近は寝癖もあまりないサキュバス
葉っぱも生えそろい気力充実のマンドレイク
キムコのお陰で臭くないゾンビ。


後半3人だけ頑張ってもカッコよく紹介できない
不安だ。

バナナを電話に見立てて一人でピンクトークごっこをしているドゥクスは論外で。



●冒険40日目
驚いた。
ザフーの石段を登り、雲海に佇む聖堂都市に待ち受けていたのは
純白の翼を持つ天使であった。

そして、彼女こそがアルカナを持つ最初の相手…断罪の天使パワーズと名乗った。

その冷たい眼差しに、俺は紅蓮の瞳で相対する。
俺もロードとしてここに来た…遊びに来たわけではない。

さぁ─はじめよう

ブロンズソードを構えた、その時

「待て…ニドよ、ここは私に任せるのだ…」

ドゥクスが口を開いた。
………!?
ここまで来てドゥクスのヤツ…何か秘策があるというのか?
俺は剣をしまってドゥクスの動向を見届けることにする。

ドゥクスは、右手と右足、左手と左足を同じタイミングで出しながらフラフラとパワーズへ歩いていった。

…この動きは知っている…ドゥクスがナンパする時の動きだ。

ヘイお姉さん、ピーマン食べれる? という言葉が聞こえた。
パワーズの手にした剣で一閃されたドゥクスは吹き飛ばされて石段を転げ落ちていった。

──それが戦闘開始の合図となった。

使い魔を呼び出し、断罪の天使へとブロンズソードを構え突撃する。

パワーズが放った無数の光の剣をかいくぐり、肉迫。
ブロンズソードで一撃、また一撃と斬撃を見舞う。

イフリートとは比べ物にならない耐久力。
サキュバスのバックアップを受け、強力な一撃を叩きつけ、強引に怯ませる。
その隙に、インキュバスが特殊技で雷の弱点を刻み込んだ。

カイムの闇の攻撃と、雷のレイジングスラッシュを同時に打ち付ける─

勝負は決した。


…倒された断罪の天使は、まるで己が裁かれるのを待っているかのようだった
残酷ですらあった冷たい瞳は輝きを失い、ただ座して最期の瞬間を待っているかの如く。

彼女の身から既にアルカナの力は消え、勝者である俺の体に宿っている。
これ以上、犠牲を出す必要があろうか。

彼女は呟く。己が過去に刻んだ過ちから解放されたいとの望み。
ロードであり、人の身である俺にこの身を罰して欲しい、と。

そんなもの冗談じゃない。
もう少し生きて、自分なりにもっと納得のいく贖罪の方法を考えるんだな
とだけ言って俺は踵を返した。

ドゥクスが戻ってきた。
どうやら俺が彼女からアルカナの力を手に入れた事を察したらしい。

ドゥクスは俺を──無視してそのままギクシャクした動きでパワーズへ近寄り
やっぱり意味の分からないナンパ術を披露しては殴り飛ばされていた。

この調子なら彼女は大丈夫だろう。
俺は聖堂都市を後にした。


そういえば、戦闘で全くゾンビが活躍していなかった気がするよね。
ゾンビに聞いてみると、戦いで激しい動きをすると両脇に挟んだキムコジャイアントが
落っこちてしまう為動けなかったらしい。

戦闘シーンくらいキムコ外してくれてもいいから助けて欲しかったのが本音。


…やっとアルカナの力をひとつ手に入れた俺。
こんな、不愉快で愉快な仲間と共に大志に向かって歩み続けるのだろう
先を思いやると、やはりため息が漏れるが口許に浮かぶ微笑にもふと気が付く。

パワーズに引っ叩かれ気絶しているドゥクスを揺さぶって起こす。

寝てるなよ、師匠 旅は長いぜ
「長旅も私のような天才がいれば問題ないな、ワハハ!」

いつものやり取りをかわし、俺達は大いなる目的へとまた歩み始めた
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  ~とあるロードの冒険記~
ニドですがロードとしての旅が最悪です
      第一部 Fin

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皆様こんばんは。
初めての人も、そうでない人もはぢめまして。
LOV SNSにて掲載していたものの転載、最終章で御座います。

このお話の続きは まるっぱ工場様のLOV BONに収録されております!
まるっぱ工場様

LOV BON 6の 「まゃんの小部屋」コーナーに収録させて頂いております。
興味のある方は是非、お手にとって頂けると幸いです!

僕の小話より、他のランカーさんの攻略記事がほんとタメになるから!